シバモト Ep. 9|カメラマン柴田の初めてのAMA「1986 AMA SUPERCROSS」

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すっかりおなじみとなった、ニューモト人気コンテンツ【シバモト】。モトクロス専門誌ダートクールをはじめとする、国内2輪誌の第一線で長年活躍中のカメラマン 柴田直行さんによる「1986年 AMAスーパークロス」をテーマとした内容となります。

 

当時のフィルムをスキャンした貴重な写真の数々と 1986年当時の撮影背景や裏話等のコラムとを併せて、ニューモトエクスクルーシブのコンテンツとしてお届けしていきます。今エピソードも柴田さんが初めて足を踏み入れた世界「AMAスーパークロス」の感動と興奮が伝わる内容。

 

80年代モトクロスシーンを知る、コアなファン向けの内容だけはなく、モトクロスというスポーツと文化が急速に発展していった当時のUSモトクロスシーンの記録としても非常に貴重な資料です。現在とは情報そのものの概念やスピード、量が大きく異なった80年代。実際に現地取材と撮影を行ってきた柴田さんがニューモトで発信する内容は、日本モトクロス界の財産へとなっていくものでしょう。人気の連載も終盤に差し掛かり、是非とも改めて過去エピソードの再チェックと併せてお楽しみください。エンジョイ!

 

 

【Ep. 9 – 1986 AMA MOTOCROSS R1 GAINESVILLE 後編】

スーパークロスの合間に行われたモトクロス(アウトドアナショナル)開幕戦のお話。その後編です。アウトドアナショナルの魅力はスロットル全開とそのスピード感。ヒヨッコのMXカメラマンだった俺はスーパークロス以上の衝撃をこのゲンズビスルで体験しました。

フロリダ半島はあんなに広いのに最も高い山が98mとほぼフラット。なのにゲンズビルのコースレイアウトはアップダウンがあり、一方路面はフロリダらしいサンド質。これが絶妙に面白い。

サンド路面が前輪に走行抵抗を与え、後輪の回転を阻む。それに負けじと右手のアクセルはガチンという所まで回し切って固定され、日本では聞いたことが無いほど高回転をキープして飛ぶよう走る。特に125クラスはほぼコース全域で全開走行。もはや排気音というより高周波の音波。シビれます。「今まで俺が日本で見てきたのがモトクロスだとすると、これは何だ?」本気でそう思いました。

決勝日の朝、いよいよレースが始まる。最初のレーススタートを撮ろうと、俺は興奮しながら定番の1コーナー立ち上がりでカメラを構えた。1コーナーは広いコース幅のままUターン。コースのアウト側を示すのはコースロープじゃなくて、路面に置かれた古タイヤ。俺の常識ではライダーはイン側に殺到するはずなので、タイヤのすぐ横でも安全。念のため5mくらい下がって最終的なカメラポジション決定。

さあスタート。ファインダー越しに40台のスターティングゲートの幅がそのまま1コーナーを回って来たように見えた。ヤバい!シャッターを切ってすぐに走って後ろに逃げた。
アウト側の全開走行ライダーズは完全にコース幅を無視。例の古タイヤは走行集団の中で宙を舞い、さっきまで俺が居た場所には無数の轍。まさにアウトドアナショナルの洗礼だった。

大きなジャンプよりもコーナーやストレートの方が見応えがある。エンジンパワーを絞り出すように回し切って争う本当のモトクロス。バイクが走ってる間、ずっと驚きやドキドキの連続。おまけにレース展開もバトルの連発で、さらに劇的なゴールシーン。そうか、これがAMAのアウトドアナショナルなんだ、と完全に洗脳された。

日本国内ではジャパンスーパークロスがあったし、アメリカまで飛んでAMAスーパークロスを観戦した人もたくさんいるだろう。MXGPも鈴鹿と菅生で行われた。でも俺が本当に日本のMXファンに見て欲しかったのはAMAアウトドアナショナルだった。

 

本番レース直前の金曜日のタイヤテスト。と言っても当時はほとんどのファクトリーがダンロップを履いていたので、公式練習に近い雰囲気。

 

レースバンまでサインをもらいに来たファンを余裕の笑みで迎えるリック・ジョンソン。アウトドアでは開幕から6ヒート連続優勝で圧倒的な強さを見せてタイトルを獲得。

 

250クラスのスタートシーン。注目して欲しいのはアウト側のライダーが全開で回っているので、ここまで回り込んでもまだ横一線状態。40台のスターティングゲートの幅のまま1コーナーに進入するような感じ。もちろんイン側が有利なんだけど、アウト側のライダーも気持ちでは負けてません。で、手前に写ってるタイヤが例のタイヤです。

 

この日125クラスを制したジョージ・ホランド。ここもコースの一部。ゲーターバックのコースは平坦な外周の中に露天掘りで掘った大穴へ降りたり登ったり。また外周の一部が丘になっていてこの崖はその丘の部分。真っ平らなフロリダにしてはアップダウンがあり写真的にも面白いコースだった。

 

コーナーの立ち上がりで争うブロック・グローバーとジェフ・ワード。二人とも気持ちよく全開です。よく見るとワーディがバンク走行中から、アクセル全開のままインを狙って切り込んでます。

 

この日の両ヒートを制したRJ。この黒くなるくらいの青い空。コダックのKR64ってフィルムで撮っていたおかげで、未だにこの色がしっかり残ってます。他のフィルムより高価だけど無理してKR64を撮って良かった。

 

このヒゲのイケメンはA・J・ホワイティング。この年のスズキ125の中では一番の先輩格。ヒート2で3位入賞。

 

マイク・ヒーリーを覚えてますか? 後にMXGPで大活躍してTatooバリバリの強面ライダーになるんですが、これはヒーリーの17歳の頃。期待の大型新人でしたが、SXでもアウトドアでも思うように成績が出ずに苦労していました。

 

左のマルシンヘルメットがA.J.ホワイティング。RショックがWP。右は下りジャンプを飛ぶマイク・ヒーリー。今と比べるとプアなサスで思いっ切り飛んでる。ヒート2はチェーン切れでDNF。

 

立ち乗りデビット・ベイリー。サンドコースではバンクを上手く使って立ったまま走っていた。お父さんが元祖ライテク先生で、トラクション走行のパイオニア的存在。その後のJMBやエバーツ、ダンジーも似た感じの走り。

 

一方、典型的なカリフォルニアライダーのジム・ホーリー。アクセルと半クラッチでバイクを操ります。

 

右の竿立っているヤマハがヒート1優勝のキース・ボーエン。左の両足離れて前転寸前のスズキ11番が2-1で総合優勝のジョージ・ホランド。ヒート1の二人の勝負はゴールラインまで続いた。まだマニュアルフォーカスの時代。坂の向こうから来る見えないライダーを予測してピント位置を決めてシャッターを押す。撮れて良かった、と今でも思う。

 

前編にも載せたRJの表彰式。アナウンサータワーに呼ばれて総合優勝のインタビューを受けるRJ。アウトドアナショナルならではのファンとライダーの距離感。夕日も傾き影が長くなる。

 

【1986 AMA MOTOCROSS R1 GAINESVILLE 125】
1.ジョージ・ホランド(スズキ)2-1
2.エリック・キーホー(スズキ)3-2
3.キース・ボーエン(ヤマハ)1-7
4.ミッキー・ダイモンド(ホンダ)6-4
5.タイソン・ボーランド(ホンダ)5-8
6.エイ・ジェイ・ホワイティング(スズキ)13-3
7.ダグ・デュバック(ヤマハ)8-6
8.ロニー・ティシュナー(カワサキ)12-11
9.エディ・ウォーレン(カワサキ)19-5
10.ウイリー・サラート(ホンダ)10-14
11.スコット・バンワース(ヤマハ)4-DNF
12.ラリー・ブルックス(ホンダ)9-17
13.マイク・ベイヤー(ヤマハ)15-12
14.ロドニー・バー(カワサキ)14-13
15.マイク・ヒーリー(スズキ)7-DNF
16.ドニー・シュミット(カワサキ)23-9
17.フレッド・アンドリュース(ヤマハ)21-10
18.ダグ・フーバー(ホンダ)16-15
19.ガイ・クーパー(ホンダ)11-DNF
20.ロバート・ノオトン(ホンダ)22-16

 

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