シバモト Ep. 3|カメラマン柴田の初めてのAMA「1986 AMA SUPERCROSS」

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話題沸騰中! ニューモト新連載【シバモト】。モトクロス専門誌ダートクールをはじめとする、国内2輪誌の第一線で長年活躍中のカメラマン 柴田直行さんによる「1986年 AMAスーパークロス」をテーマとした内容となります。

 

当時のフィルムをスキャンした貴重な写真の数々と1986年当時の撮影背景や裏話等のコラムとを併せて、ニューモトエクスクルーシブのコンテンツとしてお届けしていきます。今エピソードも柴田さんが初めて足を踏み入れた世界「AMAスーパークロス」の感動と興奮が伝わる内容。

 

80年代モトクロスシーンを知る、コアなファン向けの内容だけはなく、モトクロスというスポーツと文化が急速に発展していった当時のUSモトクロスシーンの記録としても非常に貴重な資料です。現在とは情報そのものの概念やスピード、量が大きく異なった80年代。実際に現地取材と撮影を行ってきた柴田さんがニューモトで発信する内容は、日本モトクロス界の財産へとなっていくものでしょう。エンジョイ!

 

クラシックモトビデオ|1986 AMAスーパークロス Rd.2 ヒューストン

【Ep. 3 – 1986 AMA SUPERCROSS R2 HOUSTON】

 

1986年のAMAスーパークロス 第2戦は、テキサス州最大の都市ヒューストンのアストロドームで行われた。アナハイムからの2週間の間にスペースシャトル、チャレンジャー号の悲惨な事故があった。全米に衝撃が走り、中でもNASAのコントロールセンターがあるヒューストンは街全体が暗い雰囲気。

 

日本にはまだドームスタジアムが無かった時代。巨大なアストロドームの中に入りコースから眺めると、遥か真上に屋根がある。その広さと言うか圧倒的な空間感は忘れない。この中でレースをやるんだと興奮した。

 

スーパークロスの前日はAMAダートトラックが開催されていた。地元のケビン・シュワンツも出場。コース設営スタッフは一晩でダートラのオーバルコースからSXのコースに作り直し。AMAスーパークロスの土日開催はたくさんあるが、俺が取材した異種目ダブルヘッダーはこの時だけ。貴重な体験だった。

 

ヒューストンのレースは開幕戦と違う展開になった。アナハイムで好走を見せたリック・ジョンソンが一躍注目を集めていたが、決勝ではトップ走行中に3連ジャンプでクラッシュ。一方、アナハイムでは予選落ちとなったジェフ・ワードが優勝し、巻き返しをはかる。

 

デビッド・ベイリーは再スタート後のRJを抜いて2位入賞。ポイント上でリードを広げる。ロン・ラシーンは今回も期待に応えられずに9位止まり。プライベーター時代のガイクーパーが10位に入賞していた。

 

この2週間の休み中に先輩プレスが日本へ往復。撮影済みのフィルムを届けてくれて、ライディングスポーツ誌(当時はモトクロスネタも掲載してた)が誌面を作ってくれた。ところが編集部からアナハイムの写真に猛烈なダメ出しが。

 

先輩プレスにみっちり叱られたが「写真は編集部で撮ってるんじゃない。レース現場で撮ってるんだよ」と、反抗心がメラメラ。撮り方は変えなかったが、なぜかこのヒューストン以降の写真は好評価に変わっていった。

 

テキサス州ヒューストンにあるアストロドーム。現在では閉鎖されているが、2005年にはハリケーン被災者の避難所となった。この写真でアメリカ国旗が半旗なのはスペースシャトル、チャレンジャー号の事故への弔意。

 

デイグロー(蛍光色)の第一次ブームとなった1986年。ホンダのエースのベイリーはオレンジ、カワサキのラシーンはライムグリーン。メーカー色の蛍光化もここから始まった。2名とも深妙な表情なのは、この後でチャレンジャー号のセレモニーがあるから。

 

アストロドームはレースバンを停めた駐車場から、スタジアム内の暗い通路にバイクだけを移動してピットを設営。1人1台6畳間くらいの大きさで、各チームの間に壁もなく開放的。RJのファクトリーマシンに寄りかかっているのはヤマハのキース・ボーエン。

 

アストロドームの暗い通路でのピット作業。本当の雰囲気はこんな感じ。こういうシーンこそナイターで行われるスーパークロスらしい。3番はジョニー・オマラのCR250R。

 

ヒューストン・アストロドームの屋根はアクリル製パネルで、昼間は太陽光線が透けてこんな風に光る。88年に「ジャンプシーンの背景に光る屋根」の写真を完成したが、そのプロトタイプがこれ。この86年ではなぜストロボを焚いてないのか自分でも覚えてないが、現像後に「これだ!」という閃きはあった。

 

当時チームグリーンのKXと言えばプロサーキットではなくDMC。ショップなのに85や65のファクトリー並のチューニングマシンを作って、全米を驚かせていた。アマチュア寄りの立ち位置なのでSXでは125で活躍。

 

撮影位置がテーブルトップの上からだから、たぶん予備予選のゴールシーン。ライダーは後年にWGPやMXONで活躍するビリー・ライルス。チェッカーフラッグを持つオフィシャルのシャツがCAMEL PROなのは前日に同じ会場でダートトラックが行われたから。

 

相変わらずプロテクターのないSimonsフォークを使っている。でもヒューストンのコースは石が多いのでブロック・グローバーもラシーンもブレストガード使用。アストロドームの観客席は6階席まであって、ガラガラに見えるけどこれでも3万人以上入っている。

 

ヒートレースのスタート直後。あわや前転寸前の9番はキース・ボーエン。この写真はストロボじゃなくて高感度フィルムで撮影している。アストロドームのピットは暗かったが、フィールドは明るかった。オマラは膝をかばいながらもこの週も4位に入賞。

 

ホンダ移籍1年目のジョンソン。このブルーのFOXこそがRJという印象を持っているファンも多いはず。2戦連続でトップを走る大活躍。ここでは成立フォークを使用。チャンバーにはストーンガード付き。

 

開幕戦はまさかの予選落ちとなったワーディは、第2戦ヒューストンで優勝でリベンジ。勝ってもRJのようにはしゃいだりしない、レース職人なイメージのワーディ。

 

ゴール後に記者にレースの様子を語るワーディ。当時、ゴール後に飲むのはゲータレイドの大瓶。

 

【1986 AMA SUPERCROSS R2 HOUSTON 250MAIN】
1.ジェフ・ワード(カワサキ)
2.デビッド・ベイリー(ホンダ)
3.リック・ジョンソン(ホンダ)
4.ジョニー・オマラ(ホンダ)
5.ブロック・グローバー(ヤマハ)
6.キース・ボーエン(ヤマハ)
7.ジョージ・ホーランド(スズキ)
8.エリック・キーホー(スズキ)
9.ロン・ラシーン(カワサキ)
10.ガイ・クーパー(ホンダ)
11.ジム・ホーリー(ヤマハ)
12.ロス・ペダーソン(ヤマハ)
13.ラリー・ブルックス(ホンダ)
14.リック・ライアン(カワサキ)
15.ジェフ・リースク(ホンダ)
16.ダニー・ストーベック(ヤマハ)
17.ビリー・ライルス(カワサキ)
18.ジェフ・フッリツ(スズキ)
19.A.J.ホワイティング(スズキ)
20.アレイ・シマー(ヤマハ)
21.ミッキー・ダイモンド(ホンダ)

 

クラシックモトビデオ|1986 AMAスーパークロス Rd.2 ヒューストン

 

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