たまモト|2025 vol.1-2「渡邉豪インタビュー」ニュージーランドのMXとは

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中島漱也選手がニュージーランド選手権にフル参戦するというお話を伺って、俄然、ニュージーランドのモトクロス事情について興味が湧いたのでネットで色々調べてみたのですが、これがまあびっくるするほど情報がない…というか、えかきやの語学力では情報にたどり着けない…ということで、困った時の同胞頼り、ニュージーランドのJCRでメカニックをやってらっしゃる渡邉豪氏に電話取材をさせていただきました。何年ぶりの連絡にもかかわらず快く対応してくださった渡邉氏。おかげでニュージーランドのモトクロス事情についてやニュージーランドモトクロス界と全日本モトクロスの関係など興味深いお話を伺うことができました。

たまモト|2025 vol.1「中島漱也の2025年」

■ニュージーランドでメカニックをやるようになった経緯
たま:お久しぶりです、ご無沙汰しております
渡邉:ほんとお久しぶりですね(笑)

たま:今回は中島漱也選手のインタビューで渡邉さんのお名前が出てきたのをきっかけに、ニュージーランドのモトクロス事情についていろいろ教えていただきたいと思って連絡させていただいたんですが…
渡邉:はいはい

たま:そもそも渡邉さんはいつくらいからニュージーランドとご縁ができたんですか?
渡邉:10年くらい前になりますかね、単発でニュージーランドに来てたんですよ、平田(優)と。2014年と2015年に1ヶ月ぐらいニュージーランドトレーニングで平田と2人で来たのが最初ですね。

たま:たしかその時、ジョッシュ・コピンズさんのお宅に滞在されてそこにはジェイ(ウイルソン)さんもいらしたという…
渡邉:ジェイは住み込みでここで乗ってたんですよ

たま:そうなんですね!じゃあその時にJCR(ジョッシュコピンズレーシング)とかジェイさんと最初に交流を持たれたという
渡邉:そうですね

たま:その後も全日本でメカニックをされてたじゃないですか。そこからニュージーランドに渡られたカンジですか?
渡邉:いや、そのあとはメカやってない時もありました。サラリーマンやってた時もありますし、普通のバイク屋さんでバイトしてた時もあるんで。実際2015年か16年くらいまでですかね全日本でフルでメカやってたのは。あとは古賀太基のメカでアメリカ行ったりとかですね。

たま:その後、ニュージーランドでメカニックをされるようになった経緯というのは?
渡邉:平田とニュージーランドに行った後もジョッシュとはマメにメールのやりとりをしてて、最初冗談みたいにして「そっちで働きたいな」みたいなことを言ってたりしたんですけど、ある時ジョッシュから「うちのチームも運営が安定してきてお給料も出せるようになってきたんでこっちでメカをやらないか」っていう話をもらって「じゃあ行きます!」つってニュージーランドに来たんですね。それが2021年なんで今年で5年目ですね。
たま:それじゃもうニュージーランドのモトクロスレース界にはすっかり馴染んでらっしゃる…
渡邉:そうですね、ずっと同じチームでずっと回ってて…アジア人は私しかいないんで

たま:インスタで相変わらずお茶目なことをされているのを拝見しまして(笑)
渡邉:そうですね(笑)全日本の頃から変わってないです。ふざけてばっかりいるんで(笑)

 

■ニュージーランドでの日本人ライダー受入れについて
たま:渡邉さんはそうやってニュージーランドに渡られてずっと活動されてたわけですね。今回、中島漱也くんがニュージーランド選手権に全戦参戦されると言うことでインタビューをして、その時に「メカニックは渡邊さんがおいでになるからめっちゃ安心です」っておっしゃってて。漱也くんをチームに迎えるにあたって渡邊さんがお手伝いされたカンジなんですか?
渡邉:私は基本的に最初の車(マシン)の準備とか、彼が日本からサスペンションを持ってくるという話だったんでそれについてKYBの人と連絡とったりとか、ですかね。一番最初の走り出しの車をセットアップするくらいで、あとはこっちで手伝ってくれてるニュージーランドの人が中島くんの面倒は見てたんですけどね、去年(の夏のインターバルトレーニング)なんかは。

たま:ああ、そうなんですね。チームにとってはそういう…全く知らない子じゃないから受け入れやすいカンジなんですかね?
渡邉:そうですね、ウチ(JCR)は基本的に個人受け入れみたいなのはしてなくて、日本のYAMAHAとかから依頼が来てそこで初めて受け入れるみたいな形をとってますね、ジョッシュは。いろいろ…怪我とかするかもしれないじゃないですか

たま:はいはい
渡邉:そういう兼ね合いもあるんでYAMAHAを通してお話をもらったものは受け入れるという形にしてますね

たま:それって、全日本でいうと東福寺さんのチームがHONDAを通して海外の選手を受け入れてスポット参戦させたりしている…あれに近いカンジかな?
渡邉:そうですね。日本のYAMAHAもそうやって海外のコネクションをちょっとずつ作ってって、ていうことだと思うんですよね

たま:日本のYAMAHAさんにとってニュージーランドのコネクションというのがジョッシュ・コピンズさんのレーシングチームということになるんですね
渡邉:そうですね。何年か前…たしか2015年に1回、小方(誠)がベン・タウンリーの家に同じような形でステイしてやった(トレーニング)と思うんですけどね

たま:そうなんですか?!
渡邉:でもたぶん、それは続かなかったんじゃないですかね、HONDAの方も…

たま:で、YAMAHAさんはそれをずっと継続できているカンジ?
渡邉:そうですね。ニュージーランドの何が一番いいかって、日本と季節が逆だっていうのと全日本の開幕前まで乗れるっていうのが一番のメリットだと思うんですけどね。

たま:なるほど。(オーストラリア選手権に参戦している)横山(遥希)くんを見てると全日本とオーストラリアを行ったり来たりがかなり大変そうですもんね。それがニュージーランドの場合はちょうどニュージーランドのシーズンが終わってすぐに全日本が始まるというタイミングの良さで
渡邉:そうですね、さらに(季節が逆なので)開幕まであったかい環境でずっと練習できるっていうのが…怪我とかしているライダーだとやっぱいいんじゃないですかね、あったかいところの方が

たま:なるほど。漱也くんもプレート取ってすぐだってことなんで…
渡邉:あ、そうなんですか?

たま:去年の暮れにMFJの表彰式があったんですけど、その表彰式の前日しか日にちが空いてなくて、その日にプレート取る手術をして痛み止め飲んで表彰式に来たっていう話を聞いてたいへんだったねって…
渡邉:そうなんですか!YAMAHAも以前は渡辺祐介をアメリカに送ったりとかしてたと思うんですけど、アメリカはすぐチームがなくなっちゃったりとか、ライダーのレベルがあまりにも高すぎるっていうのがあるんでね。今のニュージーランドのレベルと全日本のトップライダーのレベルっていうのはまあ、まだちょっとニュージーランドの方が速いくらいのカンジなんで、練習的にはいい練習になるんじゃないですかね。

たま:以前、ジェイさんに話を伺った時に、オーストラリアやニュージーランドのライダーと全日本のライダーっていうのは、例えばアメリカなりヨーロッパなりを目指す時に、自分から出てって走らなくちゃいけないみたいな環境が似てるから、オーストラリアやニュージーランドで全日本の選手が走ることはすごくプラスになると思うよっておっしゃってて。
渡邉:そうですね。その通りだと思います。

たま:なるほどなって思ってて、だから今回、漱也くんがニュージーランドの選手権4戦出るっていうのを聞いた時に、すごくいいステップの仕方かなと思いました。
渡邉:そうですね。

 

渡邉氏担当のライダー、ジェームズ・スコット選手が2024年ニュージーランド選手権MX2クラスチャンピオンを決めた時のツーショット

■ニュージーランドのモトクロス事情
たま:ニュージーランドの選手権、4戦あるとこまでは調べたんですけど、(場所が)離れているのかな?タウランガ、ロルトア、プケコヘ?
渡邉:プケコヘ、はい。あとタウポ。今年は全部ニュージーランドの北島でレースがあるんですね。

たま:北の方の?
渡邉:はい。北の方の島で全部レースがあるような感じで、私たちのワークショップは南島にあるので、毎回(北海道在住の)沼田(誠司)くんみたいな感じですね。毎回毎回全日本の時に北海道から渡ってくるみたいな。(沖縄在住の)諸見里くんとか沼田くんみたいな感じで、毎回毎回渡っていくような感じです。今までは…年に2戦ぐらいは南島でやってたんですけど、やっぱり北島の方が都会っていうのもあるしモトクロスの人口も多いんで。どうしても南でレースやるとあまり人数が集まらないっていう。

たま:なるほど
渡邉:今年初めてですね。全戦北島でやるっていうのが

たま:そういう年なんですね。あと、YAMAHAさんが冠スポンサーなんですね、ニュージーランドモトクロス選手権。
渡邉:たぶん、そうですね。今、Kawasakiもやってない、SUZUKIもやってないので。HONDAは個人の方がチームやってるだけなので。ウチもYAMAHAから予算が出てチームを運営してるんですけども…

たま:「2025年もYAMAHAがスポンサーをやることになりました」っていうのがニュージーランドモトクロス選手権のサイトのニュースに出てて。去年もそうだったんですかね?
渡邉:ですね。で、65カップとかやってますね

たま:そういう意味でYAMAHAのチームは有利っていうことなんでしょうか?
渡邉:うーん、有利か有利かじゃないかはちょっとわかんないですけども

たま:レースはしやすいみたいな?
渡邉:まあ、かもしれないですね。プライベーターの人にとって。レースプランとかどういう風になってるのかわかんないですけど、でもまあいいのかもしれないですね

たま:コピンズさんの同じチームに去年のMX2のチャンピオンの…名前は…
渡邉:ジェームズ・スコットさんですね

たま:そう、そのスコットさんがいらっしゃるというお話で、今年も同じチームで走られる?
渡邉:そうです。私は去年からですね、ジェームズくんのメカニックやって、今年もジェームズくんのメカニックするような感じで。ワークショップに戻ったら全員のバイクをメンテナンスしてっていうような感じですね。

たま:そうなんですね。渡邉さん、今メカニックの一番偉い人になってたりするんですか?
渡邉:一応チームの中ではチーフメカっていう位置づけなんですけど でも1人しかいないのでメカニックが…ようはフルタイムでやってるメカニックが。

たま:それ以外のメカニックさんはその年その年とかで契約とかそのレースレースで契約とかする感じですか?
渡邉:週末だけお手伝いに来てもらったりとか、単発で忙しい時にだけ来て手伝ってもらったりとかっていう。普段は自分のバイク屋をやってる人が週末だけ来て手伝ってくれたりとか

たま:その辺は全日本と近いですね
渡邉:そうですね。全日本のプライベートチームに非常に近いですね。1人だけしっかり店番の人がいてレースの時だけごちゃごちゃ集まってくるカンジですね。

 

■ニュージーランドのコースについて
たま:コースについてですが…このニュージーランド選手権コースって、今までもレースをやってるコースなんですか?
渡邉:そうですね。ニュージーランドでは代表的な

たま:日本と比べてどうなんですか?広いとか難しいとか
渡邉:日本で言うSUGOとかHSRとか、ほぼ世界にも通用するようなコースじゃないですか。ニュージーランドだと(最終戦の)タウポとかはワールドジュニアやったことがあるとか、そういうようなコースになるんで。コースのレベルから言うと、SUGOとか九州みたいな感じですかね、全体的に。

たま:他の3コースも大体同じ?
渡邉:まあそうですね、他のところはオフビまで広くはないですけど、広島とか、まあ、名阪とかっていうぐらいの感じですね。日本でいうと

たま:コースの規模についても、日本から行って走りやすい感じではある?
渡邉:そうですね

たま:アメリカみたいにやたら広いとか、やたら…
渡邉:その…フープスがすんごい難しいとかそういうのは全くないですね。ただちょっとタウポとかはサンドトラックなので、それは日本にはあんまり、昔の藤沢みたいな感じですよね、土も

たま:そうなんですね
渡邉:でも、とっつきやすいっちゃとっつきやすいとは思います

たま:日本よりちょっと規模が大きいとか、ちょっと難しいとか、日本とちょっと違うぐらいのレースコースみたいな?
渡邉:そうですね。広島やSUGOなんか見たらやっぱり、日本のコースもすごいなぁと思うんですけど。ニュージーランドもおんなじような感じですかね。いきなりグレンヘレンに行くとか、ああいう感じではないですよ。もっとこう、敷居が低いですよ。いきなり、ああいうのではない

たま:アメリカのコースだとスケールがあまりに違って、とかありますけど…
渡邉:そう、もうちょっと、なんか気負っちゃって、あれになるんですけど、そういうのはないです

たま:じゃあ、中島くんにとってはいい環境で、気候も良くて、頑張れる感じですかね
渡邉:そうですね。オフシーズンのトレーニングには一番いいんじゃないかなと思いますけどね

 

フランスで開催されたモトクロスオブネイションズにて、担当ライダーのジェームズ・スコット選手とともに

■案外情報がないニュージーランドのモトクロス
たま:なるほど、おかげですごい解像度が上がりました。ネットで調べたらあんまり情報ないんですよ、ニュージーランド
渡邉:そうですね。みんな情報が欲しいみたいで、ジェイ・ウィルソンに聞いたりとか、浦島さんとかもジェイ・ウィルソンに詳しく聞いてましたね

たま:インタビューされてましたね。浦島さんほどの語学力があれば、ジェイから直接聞き出すんですけど、なかなかそれはハードルが高いので(笑)
渡邉:そうですね、浦島さんとはアメリカのネイションズで、私はニュージーランドチームで行ってたんですけど、その時ちょっと時間とって取材をなんていう話をしてたんですけど、なかなかお互い忙しくて

たま:ネイションズは特にね
渡邉:やっぱり情報欲しかったみたいなんですけどね、こっちの

たま:今回改めて調べて、これは手も足も出ないなと思ったんですよ。それでこれは渡邉さんに直接聞くのが一番いいやって思って、携帯に番号が残ってるのを発見した時ちょっと小躍りしました私(笑)
渡邉:Kawasaki時代ですね、番号がずっと変わってないってことですね(笑)

たま:なんとなく、番号を教えていただいた記憶があったんですよ
渡邉:はいはいはいはい

たま:調べてみたらちゃんとあった!って携帯替えてなくてよかったってすごい思いました(笑)
渡邉:なんか絵の話をしててそれで盛り上がってじゃあ電話番号なんて言った記憶があるんですけど

たま:そうですそんなだと思います。いや何が役に立つかわからないなって思いました(笑)
渡邉:本当ですね(笑)

たま:もちろん中島くんが今回行かれるということで、中島くんのインタビューしてたらもっとお話聞きたくなったっていうのもあるんですけど、メカニックの方が海外で、伊藤マー(昌弘)くんとかね…やってらっしゃるのをやっぱり伝えたい気持ちもあって
渡邉:はいはいはいはい

たま:海外で頑張ってるのはライダーだけじゃないんだよっていうのを。できるだけ聞いたお話もたくさん載せられるようにしますんで
渡邉:はい、ありがとうございます

たま:こちらこそありがとうございました。

 

■2025NZ Motocross Championship(ニュージーランドモトクロス選手権)スケジュール
Round 1 on 15 February hosted by Tauranga MCC(タウランガ)
Round 2 on 22 February hosted by Rotorua MCC(ロトルア)
Round 3 on 08 March hosted by Pukekohe MCC(プケコヘ)
Round 4 [Final] on 16 March hosted by Taupo MCC (タウポ)

Motorcycling New Zealand
https://mnz.co.nz/getting-started/disciplines/motocross/

たまモト|2025 vol.1「中島漱也の2025年」


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