シバモト Ep. 8|カメラマン柴田の初めてのAMA「1986 AMA SUPERCROSS」

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すっかりおなじみとなった、ニューモト人気コンテンツ【シバモト】。モトクロス専門誌ダートクールをはじめとする、国内2輪誌の第一線で長年活躍中のカメラマン 柴田直行さんによる「1986年 AMAスーパークロス」をテーマとした内容となります。

 

当時のフィルムをスキャンした貴重な写真の数々と 1986年当時の撮影背景や裏話等のコラムとを併せて、ニューモトエクスクルーシブのコンテンツとしてお届けしていきます。今エピソードも柴田さんが初めて足を踏み入れた世界「AMAスーパークロス」の感動と興奮が伝わる内容。

 

80年代モトクロスシーンを知る、コアなファン向けの内容だけはなく、モトクロスというスポーツと文化が急速に発展していった当時のUSモトクロスシーンの記録としても非常に貴重な資料です。現在とは情報そのものの概念やスピード、量が大きく異なった80年代。実際に現地取材と撮影を行ってきた柴田さんがニューモトで発信する内容は、日本モトクロス界の財産へとなっていくものでしょう。エンジョイ!

 

 

【Ep. 8 – 1986 AMA MOTOCROSS R1 GAINESVILLE 前編】

今回はスーパークロスの合間に行われたアウトドアモトクロスのお話。言いたい事も見せたい写真もたくさんあるので前編、後編に分けてお送りします。

スーパークロス第6戦を終えたチームクルーは、南下して常夏のフロリダ州へ。この半日ほどの移動は、ファクトリーのレースバンに同乗させてもらった。理由は交通費を抑えるためだったが、助手席から大陸を移動しながらレースを続けるメカさん達の苦労を偲び、良い経験になった。まだ牧歌的な時代。こんな事も大目に見てもらえた。そしてこの時が州境を超える初体験。

スーパークロス中盤戦の山場である第7戦デイトナを前に、この週末はモトクロスのの開幕戦を迎える。スタジアムのインドアに対して、コースで行われるモトクロスはアウトドアナショナルと呼ばれていた。

会場はデイトナにほど近いゲインズビル。スーパークロスが行われる大都会から見れば、かなりローカルな雰囲気漂う田舎町。それだけにリアルなアメリカを感じられる。大きな大学のある学園都市でもある。気温も快適ですごしやすく、ホテルの駐車場でバイクのフルオーバーホールを行うメカニックも多い。バイクの仕様もアウトドアへ変更される。

現在ではスーパークロスとアウトドアナショナルは開催期間が分かれているが、1986年はSXのシーズン中にアウトドアが5戦組み込まれていた。オーバーに言うと3月から6月はSXとアウトドアが交互に行われていた感じ。それだけアウトドアの重要度というか支持率が高く、自分の肌感覚で言うと当時はスーパークロスとアウトドアは同格であった。

アウトドアナショナルは85年までの125cc、250cc、500ccの3クラス制から、86年からは125クラスのみがフルシーズンの11戦で、250と500それぞれのクラスは前半の5戦、後半の6戦というフォーマットに変更。さらにスーパークロス同様、市販車ベースでの車両規則となり、各メーカーとも力が入っていた。

レギュレーションの変更は結果的にスターライダーを集中させることになった。250クラスにホンダはベイリー、RJ、オマラとチャンピオン経験者の勝てるライダー3人を揃え、対してカワサキはワーディとラシーンの強力な布陣で対抗。

AMAは「125クラスは若手育成」と位置付けていたが、500クラスに最新型の市販車を持たないヤマハとスズキは実力あるファクトリーライダーとワークスチューンの125を多数投入していた。おかげで125クラスは実力伯仲。キーホー、ホーランド、ボーエン、ダイモンドらが、ヒート毎にウイナーを入れ替える長く厳しい11戦となった。

 

ゲンズビルに着いて週末までの間に、ホテルの駐車場でグローバーのマシンを整備するメカさん。なんたってアメリカ大陸は広い。毎週本拠地のロサンゼルスに帰れる訳じゃないし、スケジュールによっては出張が続く。AMAはみんなこんな感じで青空の下、ホテルの駐車場で整備。時間があればフレーム塗装からクランクまで全バラしてた。左がSX用のYZで、右がこれから組み立てるアウトドア用だと思う。

 

これはジム・ホーリーのレースバン。コーヒー片手に車内にいるのがジムの父でメカのアルさん。背中を向けているのは新人メカのマイロ君。この次の日、自分で削ったシリンダーをテスト中にバク転して足を骨折。本番では松葉杖でメカしてた。写ってないけどその時のライダーはアレー・シマー。あのケビン・ウインダムを長年担当したメカさん。

 

ホテルの駐車場スナップシリーズその3。SCOTTゴーグルのレーシングサービス担当のビーボ・フォルテさん。よく見ると運転席でゴーグルしてる(Thank you Bivo!)。車のカラーリングもイカしてる。とにかくAMAモトクロスの全てを記録したくて、こうして写真を撮っていた。

 

スーパークロスと違ってナショナルの決勝日は朝が早い。まだ太陽が低く、ライダーのテンションが高まる前にカメラを構える。オークリーのハーフマスクと格闘するリック・ジョンソン。横で笑っているのはアメリカンホンダの名監督デイブ・アーノルド。

 

ロン・ラシーンのレースバン。当時はこんな感じで気軽に走行後のライダーの表情も撮る事ができた。相当なペースで走っていたと思うけど練習走行じゃぜんぜんヘロってない。こんな感じのラシーンも好きだ。

 

これは予選のスタート。昨年500ccクラスに出場していたデビッド・ベイリーは予選に参加。これ1コーナーのイン側からなんだけど、アウト側のヤツも負けてない。

 

左はホンダに抜擢されてこの年の125タイトルを獲得するミッキー・ダイモンド。この日は印象に残るような走りはなく写真も少なかった。左はその後、全日本モトクロスにやって来たエディー・ウォーレン。この日は19-5で総合9位。ちなみにロニー・ティシュナーも出場していて12-11で総合8位。

 

ヤマハの125クラスのエース格だったキース・ボーエン。スーパークロスでは250に乗っていたし、125クラスでは実力的には格上の感あり。とにかく観客はこんな全開を間近で見ることができて羨ましい。

 

ダブルジャンプを飛ぶジェフ・ワード。体重後ろ目で飛距離がギリギリな感じか? そしてここでもわずが10m横に観客。真っ青な空を撮りたかったんだけど、観客の様子を見るとフロリダなのに結構寒そうです。

 

前年はホンダのワークスマシンとともに敵無しで125タイトルを獲得したロン・ラシーン。86年はカワサキKXに乗り、250クラスへスイッチ。チャンピオン候補の一人だったが開幕ヒート1からクラッシュして右肩を痛めリタイヤ。これ助走はあるけど最後はほぼ垂直に登っている。木曜までは轍の無いただの壁だった。

 

オレンジのJTがカッコいいデビット・ベイリー。バイクがタイヤで隠れていて今イチな写真だと思っていたけど、今見るとゲーターバックのサンド路面の柔らかさを表してる1枚。木曜は平らなんだけど、金曜のタイヤテストと土曜のアマチュアデイでドンドン掘れちゃう。イン側がコースロープじゃなくて車のタイヤを置いてあるのはご愛嬌。

 

スズキのエースであるエリック・キーホー。キーホーはこういう感じのスカーンと空へ舞い上がるジャンプが似合ってる。この日は3-2で総合2位。

 

開幕ヒートを制したキース・ボーエン。細くて手足が長い。膝がシートの上に出てるし、ハンドルと腕と胸の中の空間が広い! クーッ、かっこいい。ウエアはマルコムスミス、BELLのモト3にSCOTTのフェイスマスクがいいね。

 

RJとワーディのバトル。下って谷底で右Uターンしてから登る。勝負に出て少々無理にインに入って来たRJに対して、インへ切り替えし応戦したワーディ。スピードを殺さずにアウトを回り切ったRJが、この後の登りで前に出る。RJ対ワーディ。これを撮りたくてアメリカまで行った。このシーンだけで、10カット以上も切った。

 

表彰台のRJ。SXよりもアウトドアの方が勝ち慣れてるせいか、風格がある。86年はオークリーのレーザーブレーズ発売初年度ですから、フロリダのファンには、RJが宇宙人の様にかっこ良く見えていたでしょう。レンズがイリジウムになるのはまだ数年後。

 

【1986 AMA MOTOCROSS R1 GAINESVILLE 250】
1. リック・ジョンソン(ホンダ)1-1
2. ジェフ・ワード(カワサキ)2-2
3. ブロック・グローバー(ヤマハ)4-3
4. デビッド・ベイリー(ホンダ)3-4
5. ジョニー・オマラ(ホンダ)5-5
6. ジム・ホーリー(ヤマハ)6-6
7. ダニー・ストーベック(ヤマハ)10-7
8. マーク・マーフィー(ヤマハ)8-9
9. ジェフ・ヒックス(ホンダ)12-10
10. アラン・キング(カワサキ)9-13
11. トム・カーソン(ホンダ)13-11
12. ブライアン・マンリー(ホンダ)14-12
16. ビリー・ライルス(カワサキ)7-20
12. ロス・ペダーソン(ヤマハ)25-8
17. アレイ・シマー(ヤマハ)11-27
16. デニス・ホーソン(カワサキ)19-14
17. ミッキー・ケスラー(カワサキ)21-15
18. ジェフ・ライズ(スズキ)20-16
19. ビリー・フランク(ヤマハ)15-DNF
20. デイブ・ホリス(ヤマハ)16-DNF

 

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