たまモト|2023 vol. 2「横澤拓夢」インタビュー

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せんだっての北海道大会のレポで予告いたしました、横澤拓夢選手インタビューをお届けいたします。いつにも増してけっこうなボリュームになっちゃいましたが、是非最後まで読んでいただきたいです。

第5戦北海道大会IA2クラスにおいてヒート1で3位、ヒート2では強敵アロンソ選手を下して堂々の優勝を飾られた横澤拓夢選手。表彰台では飲み口爽快なビールのように爽やかな笑顔を見せてくださいました。実はこの大会以前から「お客さんを楽しませよう」とご当地デカールやコンセプトウエアなど様々なアイディアを体現されている横澤選手に注目していたえかきや。北海道大会ヒート1で表彰台に上がられたのを観て昼休みに「次の『たまモト』は横澤選手特集にしたいんですけど…」とインタビューのオファーをしていました。その流れからのヒート2優勝!「やってくれたぜ!」と思わずニヤリ。レース終了後、横澤選手の元に伺うと開口一番「最高の展開になりましたね!」と満面の笑みで迎えてくださいました。ほんとにね、その笑顔まで完璧で最高ですよ。

そんな横澤選手に北海道大会の感想だけでなく、コンセプトデザインの真意やこれからの企みなどいろいろと深掘りして伺ってみました。

 

天に向けてシャンパンシャワー – shibaphoto

 

【北海道大会優勝について】

たま:まずは優勝おめでとうございます。
横澤:ありがとうございます。

たま:周りの人がみんな喜んでくれたんじゃないですか?
横澤:すごい反響が大きくて。皆から「おめでとう、おめでとう」って言ってもらえて。インスタのメッセージとかもすっごい来ましたね。

たま:ホントにかっこいい勝ちっぷりだったから、現場で観た方はもちろん配信でご覧になっていた方もすごく印象に残ったと思うんですよ。
横澤:現地で、アナウンサーの方も事前にいいアナウンスをしてくれてたんで… 流れがよかったんですよね。理想的な15分の展開だったので。

たま:スタート出れたのが功を奏したカンジなの?
横澤:まあ、そうですね。スタート出れたのがまずデカいですね。

たま:あとはコースとの相性も良かったように見えたんですが。
横澤:そうですね。けっこうサンドは好きで…

たま:コース幅が広くて轍ができやすくてちょっと海外のコースみたいな…
横澤:そうですね。2018年にイタリアに連れて行ってもらった時もあちらのサンドコースでけっこう練習しましたし、アメリカに連れて行ってもらった時もサンドコース練習していたんで、IA2の今の若いコよりはああいったタイプのコースに対して経験があるかなと思いますね。

たま:今、IA2で前の方を走るようなコ達って海外に行く機会がなかった人も少なくないですよね。その辺で経験値の差が出ましたね。
横澤:はい。あとはまあシンプルに好きなコースだっていうのもありますし。(今まで)出れなかったスタートが出れたんで余計楽しくて。「たのしー!」ってなりながら乗ってました。

たま:アロンソ選手が2位で後ろに迫ってましたけどそんなに(距離が)詰まらなかったですよね。
横澤:そうですね、最初の4周くらいでだいぶ飛ばしてその後、アロンソが2位になってからは間隔を見ながら… そんなに詰まらない感じだったんで、後半はちょっと安全にコントロールしてマージン作った分ゆとりをもって走って勝った!っていう一番いい勝ち方だったかなと。

たま:一番前を走ったからってテンパらずにいろいろちゃんと計算できるあたりも経験値ですね。
横澤:そうっすね。だいぶ落ち着いて走れているってのはありますね。

 

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【ウエアやデカールのコンセプトデザインについて】

たま:優勝はいつ以来でしたっけ?
横澤:2018年の名阪以来ですね。

たま:結構間が空いてますね。
横澤:5年空きましたね。

たま:その時はIA2?
横澤:はい。

たま:その後、一旦IA1に上がられましたよね?
横澤:2019年にIA1に上がって、3戦目の広島で開放骨折して、その怪我がかなり大きくて調子を落としてたっていうカンジですね。

たま:そこからIA2に戻られたのが去年…
横澤:2022年からですね。

たま:スペシャルウエアとかスペシャルデカールの企画を始められたのも去年からですよね。
横澤:そうです。一番最初は去年の開幕で白&紫みたいなデカールにウエアもお揃いでつくって。

たま:ウクライナカラーのマシンもありましたね。
横澤:やりましたね! 2022年 2戦目のオフビですね。

たま:その頃からコンセプトデザインって感じになってきたように思うんですけど。
横澤:そうっすね。

たま:ウクライナカラーはマシンだけだったんですよね。
横澤:はい、ウエアは普通で。次のSUGO大会は楽天デザイン、名阪はキャリーさんの会社のデザインで。その次は開幕戦デザインに似たデカールにしたんですよ。というのも開幕戦にマシントラブルで走れなかったんでそのリベンジの意味を込めて…。

たま:なるほど。そういう流れからの今年は3戦目のSUGOがメジャーリーグの大谷翔平選手に因んだエンジェルスカラーで。
横澤:僕の地元の色を出そうと思い… 岩手と言えば大谷翔平君だなと。なので、SUGOはエンジェルスデザインのバイクと大谷さんウエアでって思ってたんですけど… 残念ながらウエアの方が間に合わなくて、エンジェルスカラーのバイクだけでした。なので4戦目の広島では大谷さんウエアでバイクは広島カープデザインで走ったんですよね。もうむちゃくちゃでした(笑)

たま:それはそれでお客さんにはウケたのでは?(笑)
横澤:そうですね。

たま:で、今回、第5戦の北海道大会ではサッポロ生ビール黒ラベル…
横澤:はい(笑)

たま:ウエアもデカールもサッポロ黒生で、表彰台でサッポロ黒生飲んでって、完璧なシナリオになりましたね(笑)
横澤:完璧だったっすね。もう、できすぎなくらいでしたよね。あまりにできすぎで帰りの飛行機墜落するんじゃないかと思いました(笑)

たま:そういったコンセプトデザインについて、SUGO前にお話を伺った時「お客さんに楽しんでもらえるようにっていう気持ちが大きい」っておっしゃってたじゃないですか。今回はそれが完璧なカタチで、ウエアとマシンだけじゃなく、ヒート1で3位表彰台に乗って「次は真ん中で黒生飲みたいです」っておっしゃって、次のヒート2でホントに表彰台の真ん中で黒生飲み干すっていう、すごく物語性のある勝ち方をされたので…
横澤:はい(笑)

たま:おそらく北海道大会の観客の中には横澤選手をあまり知らないって方もいらしたと思うんですね。全日本大会がしばらく行われてなかったこともあって…そういう方々もみんな横澤選手のことを覚えてくれたと思うしファンになってくれたんじゃないかと思うので…
横澤:そうですね。やあ…嬉しいですね、そうやって楽しんでもらうことができて。

 

ヒート1の表彰台(3位)で「次は真ん中で黒ラベルを開けたいです」との言葉通り、ヒート2では黒ラベルのビール缶を手に表彰台中央に登壇 – shibaphoto

 

【次なる企み】
横澤:実は、次の名阪も企んでるんで…

たま:おお! 企んでるんですね?! 前回、お話を伺った時に拓夢くんがアイディアを出してキャリーさん(CarryDesign)に伝えたらノリノリで考えてくれるっておっしゃってましたよね。
横澤:毎回、2週間前くらいに僕がいきなりLINEして「こんなのどうですか?」みたいな…

たま:2週間前? そんななの?!!(笑)
横澤:はい(笑)今回とかほんと1週間前くらいにキャリーさんに黒ラベルの画像を送って「これがいいです」って言ったら「いいねえ」って返ってきてその2日後にはあのデカールのデザインになってたんです。

たま:すごいですね。で、そのデカールをキャリーさんが持ってこられるカンジなんですか?
横澤:そうです。

たま:わりとギリギリじゃないですかそれって。
横澤:あ、でも水曜日には届いてますよ。

たま:なるほど。それで水曜日にデカール貼って、ウエアがある時はウエアも届いて… っていう。
横澤:はい。で、次の名阪の話をちょっとしたいです。

たま:はい
横澤:僕、今年の目標がネイションズに行くことで。すごい目標にしてて、仲の良い鳥谷部くんが(2022年ネイションズに)行ったのを身近で見てて、すごい羨ましくて、本当にネイションズ行きたいなって思ってて。(下田)丈にも「俺、ネイションズに行きたいから、丈が行けるんやったら一緒に行こう!」みたいな話をメッセージで送ったんですね。今年はそれを目標に頑張ってたところもあったんです。今、僕はランキング2位で、トップは(外国人の)アロンソ選手ですし(実質日本人トップなので)行ける資格はあると思うんですけど、HSR(第7戦九州大会)と被って(日本はネイションズに参加しないことになったので)行けないじゃないですか。それがショックで。日程ずらして欲しいって言う気持ちしかないんですけど… 今年は(ネイションズ開催が)フランスのエルネーですごく盛り上がるところだったんで「ああ、行ってみたいなあ」って思ってて、それもすごいショックで。

たま:残念…
横澤:そこで、名阪は「勝手にネイションズ仕様」をやっちゃおうと思ってて。いつも(ネイションズ日本代表のメンバーは)名阪で発表されるじゃないですか。だから名阪でって。

たま:なるほど。
横澤:元々、僕のウエアはキャンバス(CANVAS)といってオリジナルデザインのウエアなんですけど。その会社に「今年はネイションズ行くから!」ってシーズンオフから言ってたんですよ。「だったら俺らにデザインさせてくれ」って言ってもらってたんです。それで「今年のネイションズは全日本のレースと日程が被ってて(参戦しないので)行けなくなった」って話をしたら「でも、お前、ランキング2位だろう?」と「だったらお前がIA2の日本人トップだし代表だよ」「俺らが日本代表仕様のウエア作るから、全日本のレースで着ちゃいなよ」って言ってくれて。

たま:じゃあ「心は日本代表・心はネイションズ」っていう…
横澤:はい。実は、北海道大会の前にはそのデザイン、ガチガチの日本代表みたいなのが出来上がってて。でも北海道前、浅井くん(浅井亮太選手)がポイントランキング3位にいて、北海道で浅井くんに抜かれたら日本代表ウエアなんて着れないし。あとは、ビクトルに勝ったら優勝したらそのウエア着る資格もあるな、とかけっこう自分にプレッシャーかけてて。

たま:なるほど。
横澤:それで、北海道大会で勝てたんでそういう意味でも嬉しかったですね。

たま:誰はばかることなく名阪で日本代表ウエアが着れるなと。
横澤:そうですね。自分で自分に「よくやったぞ!」っていう(笑)

たま:では、名阪はその日本代表仕様で走られるということで。
横澤:「もし日本代表だとしたら2023」ですね。

たま:「幻の2023チームジャパンウエア」なんだ。
横澤:はい。

たま:じゃあ、デカールもそのコンセプトで考えてもらうの?
横澤:そうですね。デカールとヘルメットをキャリーさんでつくってもらって。ウエアはキャンバス本社からデザインが送られてきてるんで。

たま:素晴らしいですね!
横澤:そこからはちょっと外れちゃうんですけどキャンバスでリック・ジョンソンモデルっていうのがあって。

たま:ほう!
横澤:それがめちゃくちゃUSA仕様なんですよ。それもセットで届くんでヒート1は日本代表のウエア着て、ヒート2はUSA着る予定です(笑)

たま:(笑)それじゃ星条旗とかがばっちり入ってて…
横澤:そうです。モトパンにアメリカ国旗がばっちり入ってます。多国籍仕様で…(笑)

たま:RJモデルのウエアでバイクは日本代表なんだ… それは「ひとりネイションズ」なのでは?(笑)
横澤:そうっすね「ひとりネイションズ」ですね(笑)

たま:かっこいい走りをせざるを得ない、ヘタれた走りは見せられない…
横澤:それもまたプレッシャーで(笑)

 

北海道大会ヒート2、トップを独走する横澤選手。マシンとヘルメットに輝くサッポロ生ビール黒ラベルの星は横澤選手なりの北海道のファンへのメッセージ – shibaphoto

 

【様々な話題作りに込められた熱い想い】

たま:そうやって話題を提供してくださるのってファンにとってはすごく嬉しいと思うんですよ。お客さんの楽しみとしてもそうだし、紹介する側も「ここ見てね!」って紹介しやすいし。以前、お話を伺った時に「たくさんの人に助けられてレースをしているから注目を浴びることでそういう人たちにお返しをしたい」っておっしゃってたんですけど。
横澤:はい。

たま:そういう意味では「お返し」をし続けてる状態ですね、まさに今。
横澤:いや〜、まだ全然足りてないっすね。ちゃんと返す為にはチャンピオンを獲らないとって思ってるんで。それが達成できるまでは、まだまだ。

たま:これから後半戦ですからね。
横澤:はい、ここから巻き返して。

たま:そういう意味では、最初に中島漱也選手がアロンソ選手に勝って、次に北海道大会で横澤選手が勝たれて。SUGO前にIA2ライダーにお話を伺った時、中島選手にしても浅井選手にしても「去年のジェイさん(昨年のIA2チャンピオン、ジェイ・ウイルソン選手)は完璧すぎて敵わなかったけれども、アロンソ選手に関してはまだ付け込む余地があると思っているんでがんばります」っておっしゃってて、実際、そういうカタチになってきているので、後半戦なんとかひっくり返してほしいなあと思ってます。
横澤:そうですね。結局、北海道もオーバーオール(総合優勝)は(アロンソ選手に)持っていかれちゃったんで、ホント、ピンピン(1位 – 1位)を獲って勝ちたいですね。

たま:ピンピン獲って「全日本勢の力を見せる」みたいなことを表彰台で言って欲しいなって思います。
横澤:「リアル大和魂」です (笑)

たま:おお、熱い!名阪の時にそういう「ひとりネイションズ」状態でピンピンで勝ってくれたりしたら、それはもうたまらなくかっこいいですね。
横澤:そうですね。

 

まさに「お前のレース」でした – shibaphoto

 

【プロ選手として】

たま:というわけでいろいろお話しいただきましたが、この機会に伝えておきたいこと、他に何かありますか?
横澤:そうですね。IA2で走ってるコ達にちょっと伝えたいなって最近思っているのは、トップグループとトップ10以降のコ達(の意識)にけっこう差があって。みんなそれぞれに上を目指してるとは思うんですけど… 僕も08番とかで、IAに上がってルーキー1年目とかはぜんぜん予選落ちとかしてたんで気持ちはわかるんですけど、今ってA級を1年走って辞めるコとかも多いから、もうちょっとがんばって続けてほしいなと。がんばって続けてればこうやって勝てたりとかもあるんで… こういうのを見て、なんとか諦めないで続けてほしいなっていう思いはありますね。

たま:横澤くんがIAに上がったのはいつだっけ?
横澤:2014年度なんでIAは9年めですね。

たま:古賀くん(古賀太基選手)とチームメイトだった年が最初?
横澤:太基とチームメイトだったのは2年目の2015年ですね。僕、太基より1年早くA級に上がってたんで。

たま:IAにあがって9年、ほんとに山あり谷ありで…
横澤:いやほんとに。でも、その経験があって今があるなと思うんで。

たま:そうですね。
横澤:あとは、レースの時、お客さんに楽しんでもらえるようにしてほしい。自分のレースでいっぱいいっぱいなのはわかるんですけど、お金を払ってチケットを買って会場に観にきてくれてる人達に「楽しかった」って思ってもらえるエンターテイメント性… そこありきでプロスポーツだと思うんで、もうちょっと盛り上げていけるように僕らも頑張らないといけないなって思うし。日本はメーカーがかなり絡んでてちょっと重たいカンジがあるんで、そういうことをし辛いかもしれないですけど、でもレースの日はメーカーの人のために走るんじゃなくてお客さんのために… お客さんに楽しんでもらうためにレースをしなきゃだめだと思ってるんです。自分のレースに100%集中するのも大事だけど、チケット買って観にきてくれた人を楽しませるのがプロ選手としてやるべきことだと思うので。そういう空気になってほしいなと思いますね、全体的に。

たま:なるほど。
横澤:ぶっちゃけ、お客さんって増えてないじゃないですか。たぶんマーケティングがすごい下手だからだと思うんですけど。僕、けっこう友達誘ってて、観にきてくれると「すっごい面白かった!また誘ってね」って言ってくれることが多いんです。観にきてくれさえすればすごく面白いから、まずは「学生は無料!」とかにして、まず来てもらって楽しさを覚えてもらえれば次からは… みたいな。そういうの(企画)いろいろできるんじゃないかなと思うんですけど。なんかもっとお客さん増えてほしいけど、結局増えないんで、だからこそ今、何度も来てくれてるお客さんってほんとにモトクロスが好きで来てくれてるんだなって思うんですよね。そういった昔からのファンは本当に大切にしなきゃいけなくて、せめてその人たちが離れていかないようにその人たちだけでも楽しんでもらえればなあ… って思いますね。まずは観にきてくれた人に楽しんでもらってそこからいろんな人が来てくれるようになれば最高なんですけどね。

たま:拓夢くんが今なさっているいろんな企みは、そういう想いに繋がっている、ということなんですね。
横澤:はい。

 

レース終了後、サッポロ生ビール黒ラベル仕様のマシンの前で大満足の笑顔 – tama

 

以上が、第五戦北海道大会終了後に横澤拓夢選手が語ってくださったお話。熱量の高い語り口に横澤選手の「モトクロス愛」がいっぱい詰まったインタビューとなりました。この熱さが少しでも伝わるといいな。

そうこう言ってるうちに9月9日, 10日には今シーズン後半戦の始まり、奈良県の名阪スポーツランドにて第6戦近畿大会が行われます。アロンソ選手一強かと思われたIA2クラスですが、中島漱也選手、横澤拓夢選手とアロンソ選手と競い勝つ選手が出てきました。「決して敵わない相手ではない」ということが証明された今、この2人に続く日本人ライダーは誰なのか、挑まれるアロンソ選手はどう戦うのか。後半戦もIA2クラスのポイント争いからは目が離せません。

またIA1クラスでは夏のインターバルにAMAナショナルに参戦されていたジェイ・ウイルソン選手がどんな走りを見せてくれるのか。そこに挑む日本人選手の戦いっぷりにも注目です。残暑厳しい中、気温の高さにも負けない熱い戦いを期待したいですね。

そしてインタビュー中に語られた、横澤選手の「名阪スペシャル幻のチームジャパン2023仕様」、「なんちゃってアメリカ代表仕様」のマシン&ウエアと彼の熱い走りにもぜひ注目してくださいね!

 

たまモト – The Newsmoto


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