モトトーク|YAMAHA FACTORY RACING TEAM 増田智義 監督 vol. 1

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新企画「モトトーク」スタート。

特に決まったテーマを設けずに、モトクロスやオフロードバイクを愛する様々な方にご登場いただきまして、その想いや情熱、思考を自由な形で共有していこうというものになります。

記念すべき初回に登場するのは、全日本モトクロス選手権に参戦する YAMAHA FACTORY RACING TEAM 増田智義 監督。元ヤマハファクトリーライダーとして全日本モトクロス選手権で優勝多数。マシン開発にも携わり、国内でのモタード界でも黎明期からトップライダーとして活躍してきた「ジョーズ」のニックネームと豪快なライディングで知られる日本を代表するレース界のレジェンドでもあります。

今回は増田監督に現在のレース界についてではなく、あえて国内における「モトクロス文化」という観点からのお考えについて、お話をお伺いしています。

 

 

【勝つだけでは意味がない。モトクロス文化を根付かすために】

モトクロスを始めたのは小学校6年生の時でした。当時いじめられてるタイプの子供だった私ですが、バイクに乗っている時は自分が強くなった気がしてとても楽しかった。とてつもない緊張感に包まれながらいつもと違う景色、いつもと違う風を感じると嫌なことすべて忘れて没頭したのを覚えてます。あの時の感覚は今でもよみがえってきます。

モトクロスを始めて半年もしないで、肩の骨を骨折してバイクと遠ざかりました。周りはもうやめると思っていたようですが、怪我が治るとすぐバイクにまたがっていました。中学生になってレースに出るようになるとモトクロスで知り合った仲間が増えました。個人競技なので仲間といってもライバルでしたが、とても仲良くなっていきました。同じ戦場で戦った同士のような存在だったのかもしれません。仲間と一緒に練習をして。またその仲間たちと命がけの戦いをする。そんなことを繰り返していると敵なのにリスペクトできる仲間が増えていきました。そのリスペクトできる仲間に勝つため努力をする。つらいことも我慢して一つのことを成し遂げる。そんなことを学びました。私を成長させてくれたと感じます。

本来スポーツとは人として成長させてくれるからこそ、価値あるものなんでしょう。そして見ている人達にも感動を与え、幸せな気持ちにできるのもスポーツの素晴らしさだと思います。スポーツにとって大事なことは感謝と相手を思いやる気持ち。これが欠けては人としての成長は無く、スポーツとしての価値はなくなってしまいます。勝ち負けがあるのである程度は利己的になってしまいがちですが、自分本位のプレーや理不尽な戦い方は結果が残ったとしてもスポーツとしての意味合いは何も無くなってしまいます。紳士的な態度で努力を惜しまず、いつもまっすぐにバイクと向き合い、誰からも慕われるようなライダーが勝ったらどうでしょうか。そのスポーツ自体の価値を押し上げてくれることでしょう。

 

 

今日、国内のモトクロス業界の状況は決して良いとは言えません。アメリカやヨーロッパのような盛り上がり方は日本人の文化や国民性を考えると難しいと感じます。しかしながら、スポーツとして国内の文化として根付かすことはできるのではないかと考えています。私たち一人一人の努力で日本人らしいモータースポーツ文化の創造をできないかと常に考えています。

モトクロスは危険といつも隣り合わせの競技です。個々の意識が高くないと事故が起こりやすく、また取り返しのつかない怪我や後遺症にもつながってしまうこともあります。いつでもライバルを転ばすことは、ある程度スキルのあるライダーにとっては難しいことではないはずです。ラグビーにとってのノーサイドの精神は、あれだけ過酷な競技だからこそ必要な思想であって、またそれこそがそのスポーツを輝かせる最大の要素であります。モトクロスも同じ考え方をしないといけない競技です。いつでも人を傷付けられるからこそ、その手前でブレーキをかけられる精神力、自己責任能力、他人を尊重する気持ちが必要なのです。技術や知識の前に、まず私たち先輩、また親が選手に伝えなければいけないことだと思います。

日本の野球が世界に認められるにはそのようなことがしっかり教育されていくシステムがあるからだと思います。礼儀正しく、感謝を忘れず、自分に厳しく、人に優しく。社会性が乏しくなりがちな勝ち負けの世界で人としてしっかり成長できるように小学生から大学、社会人、そしてプロ野球まで一貫した共通の理念が確立されているように思います。野球が人を成長させ、そして人としての成長と並行して技術も押し上げ、今の日本球界があるのだと思います。日本の野球界で育った大谷選手のスキルの高さはもちろんですが、日本人的な紳士的な行動などを見て世界的に認知されて賞賛を浴びる。日本人の教えや道徳はスポーツにとっても社会にとっても絶対に必要なものと日本人の多くの人々が感じたことでしょう。

 

 

日本のモトクロス界も変わらなければいけないと思います。礼儀正しく、感謝を忘れず、自分に厳しく、人に優しく、しっかり私たち先輩、メーカー、関係者、そして親たちが統一の意識を持って伝えていかなければいけないことだと思います。

・挨拶。誰でも必ず目を見て大きな声で挨拶する。
・感謝。コースにしっかり一礼して走行を開始する。全ての関係者、レーススタッフ、ライバルに感謝の気持ちを忘れない。道具を大事にバイクにも感謝する。

ノーサイドの精神。バイクを降りたら全てそれまでの戦いはおしまい。相手をリスペクトし、一人の人間として恥ずかしくない行動をとる。

 

 

やらなければいけないこと、伝えなければいけないことはまだ沢山あるかも知れませんが、こんなことから始めていきませんか。現在の日本のトップライダーはメーカー問わずこの事ができている選手ばかりです。卵が先か鶏が先かみたいですが、この事がしっかりできているから感動する戦いができるし、誰もが応援したくなるのだと思います。今は数名しかいない誇れる日本のライダー達をもっともっと多く作り出し、さらに高い次元での競い合い、切磋琢磨する姿を見て行きたいです。


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