Gモト|ビハインド・ザ・ゲート「笠井杏樹」vol. 5

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「ビハインド・ザ・ゲート 住友ゴム工業株式会社 笠井杏樹」さんvol.5。今回は・・・「開発者として独り立ちするには3年から5年」と言われている日本が誇るタイヤメーカーダンロップさん。「開発者がスクスク育つ」環境の中でどこまで開発者を極めていくのか。2024年某日、3年目の笠井さんに「自分らしさを作り出す、作り出すためには」をテーマにお話を伺いました。

 

他メーカーサービスマンからも愛情込めて「あんじゅ」と呼ばれる笠井さん。彼女がレース会場に居ると「私達も笑顔」になる。私が撮影した写真のほとんどが笑顔。そんな笠井さんの過去取材はこちらから見ていただけます。とても興味深い経歴を持ち自分らしく生きている「走る開発者」です。

 

Gモト:以前、笠井さんには「 物理現象として、タイヤから曲がる力が何パーセント上がったら良い感じの領域に入るのか?」良い感じをきちんとデータ化する。こんな課題がありましたね。 この課題を伺った際に「開発者として独り立ちするには3年から5年」とお聞きしました。いよいよ、独り立ちをしても良い3年目ですが、現在、笠井さんが仕事をする際に気をつけている事は?
笠井杏樹:そうですね、私は納期を伸ばしがちで怒られるんですけど、依頼する際には細かく連絡を取るようにしています。

Gモト:ライダーに対して心掛けている事は?
笠井杏樹:ライダーに対しては、当たり前なんですが、ライダーのコメントをまず理解する。で、それが正しいのか聞くだけではなく、コースに見に行き本当に起きているのかという擦り合わせをきちんと見ないかんと思って仕事しています。

 

Gモト:笠井さんが仕事が楽しいと思っている現状、ご自身でバイクに乗り、オフロードの練習ではご自身でタイヤにグルービングしてみたりと様々なことを試されていますね。このような活動は「笠井杏樹だから」だと思います。それは笠井さんの個性ですよね。この個性を活かし、今後ご自身で会社に提案していける事ってありますか?
笠井杏樹:何が大事とか、何て言うんだろ・・・んーこの方向に進んでいきましょうという時に「レースで何が大事か」、「タイムを出すには何が大事か」という事を提案できると思います。具体的に何て言えば良いんだろう・・・。

 

Gモト:わかりますよ。笠井さんの経歴や積み上げてきた事って「簡単ではない」。でも今年は「3年目」じゃですか。「自分らしさ」って作り始めても良いんじゃないかなぁって思うんです。
笠井杏樹:たしかに・・・まったく会社と外れていいのであれば趣向は違くなってきますけど、私の実家は「電気の解析」の仕事を営んでいます。伝わりますか?


Gモト:具体的には?
笠井杏樹:ライダーがどう走っているかというデータロガーの解析をしています。そういう面をもっとオフロードでも使えたらなと思っています。

Gモト:データロガーってオフロードでも使えるんですか?
笠井杏樹:結構、使えますよ。オフロードだと振れが大きいので見にくいんですけどね。会社にも機械があって、そういう取り組みもしています。

Gモト:ご実家の家業と、笠井さん自身の仕事がマッチングする可能性もあるんですね。
笠井杏樹:そうですね。タイヤ開発のステップアップとして使えるんかなって。

Gモト:データロガーを使うメリットは?
笠井杏樹:ライダーのコメントが正しいかどうなのか、という答え合わせができる事です。

Gモト:どうやって計測するんですか?
笠井杏樹:オフロードはフロント・リアサスペンションのストローク量を計測
したりです。

Gモト:そこがマッチングできる内容が向上していくと笠井さんらしくクロスオーバーしていくんですね。
笠井杏樹:そうですね。ロードだとタイヤがどれだけ潰れているとかもかなりわかるんです。サスペンションが入り切ったところから、まだタイヤが潰れていたらとか、スライド量が⚪︎パーセントとか、ロール角などもわかります。

Gモト:モトクロスタイヤでご自身で提案してみたいタイヤってありますか?
笠井杏樹:そうですね・・・空気圧で色々変わったら良いなって思います。

Gモト:具体的には?


笠井杏樹:現在、サポートタイヤって一般販売してないんですけど、そういうタイヤではなくても、もっとこう、初心者からハイエンドまで、こうなんて言ったら良いんだろう・・・空気圧だけで対応できたらなって。で、実はそういう取り組みをトライアルではしていて、トライアルは空気圧に対しシビアなので、モトクロスでも同じようにできたらなって考えています。

Gモト:1本のタイヤで空気圧を変えると・・・
笠井杏樹:そうオールマイティーなタイヤ。空気圧だけでライダーの好みに合わせられるタイヤ。


Gモト:それが今、笠井さんが思ってるタイヤですね。
笠井杏樹:そうですね。でも、1番は勝てるタイヤですけどね。笑

Gモト:どういうレースで勝てるタイヤを作りたいの?
笠井杏樹:んーどういうレースで?


Gモト:例えば、レースで勝てるタイヤ?ビジネスで勝てるタイヤ?
笠井杏樹:レースとして勝てるタイヤです。多くのライダーに支持してもらい「このタイヤを履いたら勝てる」と自信を持ってもらえるタイヤです。

 

Gモト:ここまでお聞きしてきたお話を実現するために、今後どのような仕事をしていきますか?
笠井杏樹:もう3年目、あまり追いきれていない数値化など、さらに開発の基礎を向上させる事が重要です。まずは基礎力を上司、先輩のレベルまで到達しないと私自身の強みも出せないと思っています。

Gモト:まず何が重要なんですか?
笠井杏樹:情報量をどれだけ頭に入れるか。

Gモト:その情報量を頭に入れていくために、ITなどを駆使するんですか?
笠井杏樹:ないです・・・本当に今考えているのはデータロガーをもっともっと使えたら良いなって考えていて、エラーが出るとどうしても自分で対応できなくて、止まってしまって全然前に進まないんです。そういう部分にも対応できるようになればと思っています。

Gモト:1日も早く笠井さんが考える事が形になってタイヤを開発しているその姿を見たいです。

 

Gモト:そうそう、レースファンの皆さんに聞かれる事があるんですが、レース会場で笠井さんにタイヤの相談できるんですか?
笠井杏樹:そうですね、声をかけていただけたら嬉しいです。こう、なんて言ったら良いんだろう「こういう挙動が出るんやけど」みたいなコメントをいただきたいなって思います。

 

この取材の際に私が感じたのは「スクスク育つ」環境で、笠井さんがどこまで開発者を極めていくのか、タイヤという走る事に重要なファクターに対するダンロップさんの情熱の高さです。4月になり4年目となる笠井さん自身が輝く事で「ライダーの安全と楽しさ」が向上し、たくさんの笑顔が増えていくんですね。ダンロップさんの働く環境は、若者の未来が輝ける環境だって事を記事を書きながらあらためて感じます。笠井さんの活躍がモーターサイクルライフを楽しくする!

いかがでしたでしょうか?ビハインド・ザ・ゲート笠井杏樹vol.5。「走る開発者」は世の中にたくさんいらっしゃると思うんですが、彼女のような生き様にはなかなか出会わないし、このような生き様だからこそ、それを可能にできるのではないでしょうか。

昨年の取材から笠井さんにはしばらく会っていないんですが、2025年全日本モトクロスで会える事が楽しみです。どのような4年目を迎えているのでしょう?次回はそこら辺も深堀していきたいと考え中です。まだまだ続くよ、笠井杏樹さんのビハインド・ザ・ゲート。
ではまたー

取材にご協力いただきました、ダンロップの皆さんご協力ありがとうございます!

ビハインド・ザ・ゲート – The Newsmoto

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