たまモト|2020 全日本モトクロス注目ライダー「たま推し」vol. 1

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遅れに遅れた2020年シーズンもやっと開幕しました。今迄とはちょっと違う形でお届けすることにした今シーズンの「たまモト」第1弾。えかきやがお話を伺ったライダーの「これは!」と思ったエピソードなどをご紹介。あなたの推しライダーを見つける一助となれば幸いです。

今回は8月末に行われた全日本モトクロス開幕戦SUGO大会の前後に伺ったお話を中心に「IA1」と「IA2」から、それぞれ2人ずつを紹介いたします。

 

■山本鯨【IA1/#400】Instagram: @ke_yamamoto

言わずと知れた2019年のIA1チャンピオン。今シーズンは小島庸平選手率いるHonda Dream Racing Bellsから参戦。ディフェンディングチャンピオンは開幕戦のSUGOでも危なげない走りでピンピンの総合優勝。そんな鯨くんから開幕前&開幕直後に伺ったお話をいくつか。

たま:今回、シーズンオフが長くなってモチベーションが保てなくなること等はなかったですか?

山本:ぜんぜんなかったですね。自粛期間中には乗れなくてトレーナーとのやりとりもリモートでしたが、その時できる事をベストを尽くしてやるというカンジで。何を目標にやって行けばいいのかって考える時もちろんありましたけど、何年もレースができなくなる可能性よりは、最低で今年はなくなるかもしれないなという可能性の方が高いという理解だったので平常心を保つように努力していました。

たま:今シーズンのIA1は強敵が多くなったと思いますが、ディフェンディングチャンピオンとしてのお気持ちは?

山本:今迄よりは(戦う)人数が増えるなあとか、戦い方が変わるかなあとか、戦況が色々動くだろうなっていうのはあります。ただ、世界戦はね、もっともっと(自分と同じレベルのライダーが)密なんで、その時にしてきた努力とかを忘れずに戦っていけば良いのかなとは思いますね。(世界戦は)僕が15位から20位の間にいるとしたらそこに20人とか30人とか入れるライダーがいるレベルの話なので…

たま:なるほど…そんな鯨君が今シーズンライバルとして意識するのは誰なんでしょう?

山本:戦った記憶があまりないライダーが多いのでわからないですけど…その中では成田さんとはここ3年戦って強みもわかってますし確実に今年も自分が戦う相手にはなるだろうなと感じています。あんまり『誰か』と戦ってもいいことないんで、僕は『自分自身』と戦う事を考えてちょっとでも自分が思うようなライディングをして、ちょっとでも見ている人達に喜んでもらえるようなレーサーであり人間になりたいなと考えてます。

ブレないなあというかよりいっそうブレなくなったなあと感じるようなお話が多かった鯨くん、開幕戦をピンピンで飾った直後に伺った感想は…

たま:開幕、めっちゃ安定してましたね。今回の走りを見て「山本鯨は今年もチャンピオンとるんじゃないか」って思った人多かったんじゃないかと。

山本:そうですね、そうなりたいですね。でもね、どの取材でも言っているんですが結局は自分ができることをやってどこまで自分と戦えるかっていう勝負なんですよね。周りを見たらたしかにトップ争いができるライダーは増えてますし去年と違う展開を想像してシュミレーションもしてます。けど、結局は自分との勝負をしないと相手にも自分にも勝てない。なのでちゃんと自分と向き合えるように生活から…私生活から…取り組んで行きたいなと思ってます。

今年の山本選手は「抜群の安定感」と「よりいっそうのストイックさ」の二本立てってカンジでとにかく手強いなと。この手強いチャンピオンをライバル達がどう攻略していくかが見所のひとつかなと思います。

 

■富田俊樹【IA1/#317】Instagram: @toshiki_317

今シーズンはYamaha Factory Racing Teamから参戦。HONDAからYAMAHAへスイッチしての参戦についてどう思ってらっしゃるのか開幕前にちょっとお話を伺ったんですが。

たま:新しい環境についてはどうですか?

富田:まだレースをしていないからレースがやりやすい環境かってのはわからないんですけど、バイク作りだったり環境づくりだったりをチームのほうでかなりやってくれているので、僕のメンタル的な部分でも余裕というか…すごくいい方向に働いてる気がします。正直、最初は不安もありましたけどそれはすぐに解消しました。マシンに関してはなんならストックの時点ですでに自分の好みのバイクなんじゃないかなという印象でした。今はとにかくバイクに乗るのが楽しいし早くレースがしたいですね。

たま:AMAに参戦して4年? AMAを経験する前と経験してからでは、どこが違いますか?

富田:日本で走ってた時は環境に甘えすぎてて『こうじゃないとレースしたくない、できない』ってちょっとワガママ言ったりとかしてたんですけど、AMAを経験してからはそういうのがなくなりましたね。AMAだと自分と同じレベルのヤツは決していいバイクじゃなかったり、トップ10に入るライダーも『え?こんな体制で走ってるんだ』って状態だったりで環境に頼ってないんですよね。そういうことに気付かされたのが一番大きかったですね。環境ではなく自分の力で切り開かなくてはいけないってことに気付いたんです。

たま:そんな気付きを得て逞しくなって帰ってきたカンジはありますよね。

富田:だけどまだ結果が伴ってないんですよね(苦笑)一昨年、昨年のスポット参戦では空回りというかちょっと考えすぎたんですよね。環境に頼らないで自分の力で…という考えもありながら、この体制だと結果を出さなくちゃいけない、という考えも浮かんで…まだ(IA1では)ルーキーなのに考え過ぎちゃった。そういった部分が今回環境が変わったことでリセットされるんじゃないかと思うんです。守るものは何もないですから(笑)

たま:同じチームにはやはりAMA帰りの渡辺祐介選手がいるわけですが

富田:彼は真面目だしストイックですね。年齢はけっこう…6コ位はなれてるのかな?でも先輩後輩とかいうチームでもないので気にしてないです。でも…鯨にもそうなんですけど、決して負けちゃいけない相手なので…

たま:じゃあトッチが一番意識するのは誰になりますか?

富田:一番意識しているのは鯨ですね。ほぼ同世代(鯨が1歳下)で、あいつは同じHRCで世界選手権に行って僕はAMAに行って、どっちが…みたいに言われていた時期もあるので、どうしても意識しちゃいますね。ちゃんとガチンコで戦ったことがまだないので、ちゃんと勝って『お前の方が速いね』って言われたいなと思って。しばらく(全日本で)みんなの前でちゃんと走れたなってレースがないので今年はちゃんと自分の走りができたなって状態に持って行くのでそれを見てもらいたい。今迄の僕とは違う所を見にきてほしいですね。

と開幕前に語っていた富田選手だったが開幕戦では今ひとつ結果に結びつかず…

たま:開幕走ってみて。どうでした?

富田:緊張しました(笑)

たま:やっぱあれなの?新しい環境でがんばんなきゃとかいろいろ考えて?

富田:そうですね〜。今思うとその辺を考えすぎたかなあと。自分で自分の首締めたかなあっていう。でも、もうどういう所がいけなかったかなあっていうのも自分なりに分析はしたので。

たま:では次で仕切り直しということで。次回はちょっと目先も変わる(トリプルヒート)じゃないですか?

富田:そうですね。だからそれにむけて練習方法も変えていかなきゃだし。スタートが絶対重要になってきますし。開幕戦はスタートが一回も決まらなかったので、そこをどうにかしなくちゃいけないなとチームとも相談しながらやってるんですけど。今迄の僕ってスタートはそんなに悪くなかったんですよね。でもHONDAの時にはやってなかったことも今試していてその辺がまだ詰め切れてなかったのかなとか。でも、そういう部分も僕が言う事をチームがしっかり聞いてくれるので。

たま:チームのレスポンスは良いと。そこは安心材料ではありますね。

富田:そうですね。開幕戦はとにかくできる筈の事ができなかった、それが悔しいです。あきらかにスピードが負けているとかそういうカンジでもなく。どうやったらいいんだろうってずっと考えながら走ってたカンジですね。今はね…ちょっと空気読みすぎたかなとか思ってます。

たま:トッチは肩の力を抜くっていうのが課題ですね。

富田:そうですね(笑)次回は抜ける筈です(笑)僕自身調子はけっして悪くない、なんなら良い位なんで、本来の走りをすれば勝てると思ってますし、僕の走りはあんなもんじゃないですっていうのをしっかり観せられるように次迄にできることを全部やります。

というわけで第3戦(第2戦中止)の富田俊樹選手がどう巻き返しを図るのか、注目したいですね。

 

■横山遥希【IA2/#1】Instagram: @haruki386

今シーズンよりTeam Kawasaki R&Dで参戦の横山選手、開幕戦のヒート1は今ひとつ結果が出なかったがヒート2では堂々1位。但し、途中までは先輩、勝谷武史との一騎打ちの状態になり胃が痛くなるような場面も。そんな横山選手に開幕の感想を伺ったところ…

たま:開幕戦はどうでしたか?

横山:ヒート1は自分のミスでコンディションも1本ラインでなかなか上がれなかったんですけど、ヒート2では気持ち切り替えてスタートから前の方に出れて。ちょっと硬さはあったんですけどトップに立ってからはまあ自分の走りができたかなと。もうちょっと自分の走りができたら後ろを引き離せたのかなあとは思いますね。

たま:888番(勝谷武史)が手強かったですか?

横山:そうですね。全日本でも4回チャンピオン取ってるライダーだし、速いってのはわかってたんですけど、なかなか引き離すことができず。結果、最後は勝谷さんがマシントラブルでリタイアだったんですけど…

たま:ああいう選手に真後ろずっと走られてたら嫌ですよね?(笑)

横山:そうですね。もう、ラインを全部見られてるような…。そこは気にしないように前だけを見て走ってたんですけど。

たま:勝谷選手が止まった後、ジャンプのところでガッて後ろを振り向いたでしょう?

横山:はいはいはい(笑)音が聞こえなくなったんで「あれ?」って思って。

たま:ああいう百戦錬磨な人に後ろにつかれるのは嫌ですもんね(笑)でも、それもまた経験値として…

横山:そうですね。全日本のレジェンドと一緒にレースができて、そのプレッシャーは今後の自分のプラスになるかなとは思いました。

たま:今年は新井宏彰選手がトレーナーをやってくださってるということで。オンライン観戦の方から「新井ちゃんのラインと似ている」って指摘が出てたんですけど、そのへんはどうなんでしょう?

横山:そこまで意識はしてないですね。新井さんと僕の乗り方は全然違うので、新井さんのいい所をもらいながら自分のいい所を伸ばしながらってカンジなので、そこまで新井さんの乗り方に持って行こうってことはないですね。新井さんからも僕のいい所を伸ばしつつ悪い所を指摘してもらう形でアドバイスをもらっているので。

たま:新井ちゃんにもちょろっと「なんか横山君のラインが新井ちゃんに似てるって言われてたよ」って伝えたら「え?俺はラインは教えてないよ?!」って…(笑)。新井選手の役割はどちらかというとトレーニングとかそういうフィジカル面の指導なんですか?

横山:そうですね。練習とトレーニングでのコーチ…トレーナーみたいな。身体の作り方とか食事面のアドバイスをいただいたり。ホントに毎日一緒にいるんで(笑)そういう面では僕にとって大きなプラスですね。

ちなみに開幕前に伺ったお話の中で興味深かったのが環境の話で

たま:実質ファクトリーということで今迄よりも恵まれた環境で集中して練習ができているんじゃないかと思うんですけど。

横山:日本に帰ってきて(2018)から毎年毎年環境が変わってるんですけど、確実に一歩ずつアップグレードできてるんで…。オーバーホールなどの大変な整備はメカニックに任せられるので、その分走る事やトレーニングに集中できています。それだけに勝たないと怒られますね(笑)

たま:横山選手のこれからの展望について教えていただけますか?

横山:今年もチャンピオンを獲るつもりで臨むのですでに来年の事(IA1へのステップアップ)もビジョンに入れてるんですけど。450に乗りたいっていうのもありますし、海外に戻りたいっていうのもすごくあるんですけど、現状なかなか…(コロナの影響などもあり)決めきれないですね。やはり僕はアメリカに行きたいなと思ってるんですけど勝谷さんみたいにオーストラリアであったりヨーロッパであったり…自分をレベルアップさせる為には、やはりどこか海外に行きたいとは思ってますね。

「小さい身体に大きな望み」を体現してぐんぐん前に進んで行く横山選手。大先輩、新井宏彰選手のサポートという鬼に金棒状態でどこまで高く登って行かれるのか興味深く見守りたいです。

 

■内田篤基【IA2/#39】 Instagram: @atsukiuchida

昨年迄はSUZUKIの社員ライダーとして活動されていた内田選手。レース活動に集中する為に退社され、SRMマウンテンライダーズからの参戦という新しい環境に身を投じられました。ある意味「背水の陣」で臨んだ開幕戦、ヒート1で見事初優勝。そんな開幕戦直後にお話を伺いました。

たま:まずは初優勝おめでとうございます。私ね、なぜか「推しライダーの初優勝に立ち会えない」っていうジンクスがあって(笑)でもリモートで拝見しててとっても嬉しかったです。

内田:ありがとうございます!(笑)

たま:反響は大きかったですか?

内田:そうですね、みんな喜んでくれて。メッセージとかもいろいろ来て。こんだけみんな応援してくれてるんだなあってのを実感しましたね。

たま:内田君は今回環境が大きく変わられて。会社辞めちゃったんですって?それはやっぱりレースに集中したいっていう?

内田:そうなんですよ。前の所が今迄通りの体制でレースすることが厳しくなっちゃって。自分はもうちょっとレースがしたかったんで、そのときタイミングよくSRMの方で声をかけていただいたんで。

たま:生活も大事だけどやはりレースで勝ちたいってなると考えるものはありますよね。でもちょっとした決意だったんじゃない?

内田:そうですね。今迄最高位が2番でずっと勝ちたいって思ってて…会社辞めてまでっていうプレッシャーもあったんですよ。なので、嬉しさもあるんですけど勝ててほっとしてますね。丁度コロナの影響で長いシーズンオフだったんですけど、いろいろ環境が変わった中ではその長さがよかったのかなあとも思います。

たま:内田君もA級6年目でしたっけ?「気がついたら中堅だった」ってカンジなんですけど、ちょうどそういう時期にうまいこと転換期が来て…応援してくれる人もいっぱいいると思うんですよ。まずSUZUKIのライダーが少ないじゃない?

内田:そうなんですよね(笑)SUZUKIに乗っている一般の方が数少ないSUZUKIのライダーをすごく応援してくれていて。なのでそれに応えたいというのもありますね。開幕戦でまずは1勝できたのでこれからも少ないチャンスをモノにして…今年は勝ってチャンピオンを獲るのが目標ですね。

たま:バイクは自分で整備されてるんですか?

内田:いや、本番車はメカニックがいて…

たま:バタやん(小幡さん)とか?

内田:そうです!バタやんがやってくれてて…

たま:うわあ。それ、めっちゃ心強くないですか?

内田:そうなんです。しかも、バタやんが担当したライダーが優勝したのが(小島)庸平君以来で…15年ぶりって言ってましたね。

たま:そもそもSUZUKIで勝ったライダーが…

内田:そうなんです。IA2は竹中君以来だって…

たま:だったらその記録をどんどん更新しましょうよ

内田:そうですね!!トップとの差は2ポイントだけなんでまだまだ巻き返せますし。

ということで、初優勝で勢いを得た内田選手は全SUZUKIファンの夢を背負って今シーズンのチャンピオンを狙い奮闘してくれるはずです。SUZUKI好きはこぞって応援しなきゃ!


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