Gモト|ビハインド・ザ・ゲート「笠井杏樹」vol. 4

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笠井杏樹ファンの皆さんお待たせしました。やっとお届けします「ビハインド・ザ・ゲート 住友ゴム工業株式会社 笠井杏樹」さんvol.4。今回は・・・住友ゴム工業本社に潜入し笠井さんが開発する現場を取材してきました。レース会場とは違う開発最前線の笠井さんをお届けします。

2024年某日、初めてお邪魔させていただいた開発現場には「タイヤ開発にかける情熱」が詰まっていて、この情熱があるからこそ!コースで一般道で高速道路で安心して走れるんだと再確認。日本が誇るタイヤメーカー「ダンロップ」さん。その中にいつもニコニコ元気よく仕事に取り組む笠井さんがいるってなんか素敵です。

 

他メーカーサービスマンからも愛情込めて「あんじゅ」と呼ばれる笠井さん。彼女がレース会場に居ると「私達も笑顔」になります。撮影した写真のほとんどは笑顔。笑 そんな笠井さんの過去取材はこちらから見ていただけます。とても興味深い経歴をお持ちの「走る開発者」。

 

取材当日は新幹線で神戸まで、神戸から地下鉄で最寄駅、最寄駅から大きな本社ビルを目指してテクテク歩き到着。都会にあるビル群の中とは違い静かな住宅街にある本社はとても落ち着いた雰囲気。笠井さん、今日も約束時間に笑顔で迎えてくれました。

 

会議室に案内していただきさっそく取材がスタート。

Gモト:今日は「タイヤエンジニアとして笠井さんの考えをダンロップさんを通じ迫る」というお題があります。今日は笑顔少なめでシュールにいきましょう。
笠井杏樹:笑

Gモト:まずは、全日本会場で得たデータを社内で、どうフィードバックしているの?
笠井杏樹:ライダーからコメントいただいたり、コース外から観察し得たデータを社内で「台上試験」という試験で数値を取ります。その数値とライダーから頂いたコメントを擦り合わせし「正しいか」「この数値が出ているから、ココが悪いんじゃないか」など分析しています。

話している間の連写撮影で・・・・↓

 

レース会場でも背後からの連写音で、私だと感づくと言われたことがあったような・・・。すぐに笑顔になってしまいます。
気を取り直してインタビューに戻るよ!

 

Gモト:テストしたデータや技術を市販化以外に使う事はあるんですか?
笠井杏樹:市販化以外にですね・・・結局市販化に繋がるんだろうとは思うんですけど、今、私が取り組んでいるのは、電動化に向けてで、レースとしてはまだなんですけど、そこに向けて合わせられるような特徴のタイヤをテストしたりしています。

Gモト:同じオフロードだけど「エンジン」で得たデータを「電動」に対し、合わせていく作業ですか?

笠井杏樹:そう、そうです。エンジンと電動との差を「タイヤ」で埋めることはできないのか。そこにSDGsも含め現在は、会社としても「次の段階が来た時に」対応できるような「基礎技術」をどんどん積み重ねる事をしています。

Gモト:次にタイヤ温度についてなんですが、モトクロスタイヤは何度ぐらいまで温度が上がってるんですか?
笠井杏樹:70度ぐらいまで上がります。

Gモト:土でも結構、温度が上がるんですね!
笠井杏樹:上がりますね。特に夏場のハードパックだと温度は上がります。そういうテストはないんですけど、温度が上がる要因として「空転」「揉まれる」「タイヤの変形量」があります。

 

Gモト:全日本モトクロスコースでのテストについてですが、レース前の事前テストと「土を掘り返している」レース期間中のテストではいかがですか?
笠井杏樹:同じコースでも事前テストとレース期間中で路面状況は違います。私はそこが気になっているところで、事前テストとレース期間中の条件の違いを考慮し、レースには、昨年使ったタイヤの傾向などを踏まえ準備して対応しています。

Gモト:そうなんですね。ただ、その準備ってレースをきちんとするというための対応ですよね。実際のテスト目的とは主旨が変わってきてしまうのでは?
笠井杏樹:もう、そこは埋められないので仕方がないですよね。事前テストの際には、ライダーが選択するタイヤを用意しているので、細かいテスト項目は少ないんです。ただ、この状況にも良いところがあって、路面状況が違う両方のコメントを聞けるので良いな!って思います。

Gモト:タイヤを開発していく上で、コメントはテストするライダーだけから聞くんですか?

笠井杏樹:そうではなく、様々なライダーにコメントを聞いています。確かに IA1のライダーの方がコメント数は多いですけど、それよりもコメントの母数を増やしたいので、エンドユーザーさんにもコメントを聞きにいきます。


Gモト:草レースとか、地方選手権のライダーさんにもコメントを聞くんですか?
笠井杏樹:そうですね。そのカテゴリーのデータは私たちの担当ではないんですが、そのカテゴリーの情報もいただいています。

 

Gモト:技術者として、開発していく中で「どのデータ」が1番の軸になっているんですか?
笠井杏樹:やはりオフロードは数値化しにくいので、ライダーのコメントが主になっていくんですけど、前回の取材でもお答えした通り「数値化」するのが主になってくるので、ライダーのコメントと擦り合わせ、何が起こっているのかを明らかにするのが大切です。

Gモト:アメリカやヨーロッパのタイヤは国内と同じ製品なんですか?
笠井杏樹:同じタイヤです。レースで新しい技術を開発し、そのまま全世界に市販しています。

Gモト:ダンロップさんて国内外の需要に関係なく「幅広く」モトクロスタイヤを販売されてますよね。素晴らしいと思いますが、どうしてですか?

笠井杏樹:・・・なんでなんですかね。笑 疑問に思ったことがないんで。笑 すみません。笑 確かにそうですよね。笑 私が聞いたのは、アメリカでの販売が好調だから。という話でした。やはりアメリカでのシェアが大きいので。他のメーカーさんが「このサイズ出して売れてる」から新しく作ろうみたいな話も結構でます。

Gモト:ミニモトサイズでも?
笠井杏樹:ミニモトサイズでも。

Gモト:なるほど!私はファンバイクが大好きなので、タイヤの種類の多いダンロップさんは魅力的です。
笠井杏樹:ぜひ!!笑

 

Gモト:開発者として楽しいと思うときは?
笠井杏樹:レースに行って、コメントが的確なライダーと仕事ができると自分も成長できる。その瞬間が楽しいですね。

Gモト:社内での技術交流はありますか?
笠井杏樹:たくさんあるとお思います、逆に4輪から2輪ロードからもあります。様々な技術を自分達の仕事に活用できないか考えます。月に一度、技術を共有する報告会もあります。


Gモト:カテゴリーは異なりますが、DUNLOP Racing Team with YAHAGIの長島哲太選手のレース活動とも擦り合わせることもあるんですか?
笠井杏樹:ありますね。あの開発も結局、レースで勝つことも含め、基礎技術の向上として活動しているので、ロードにもオフにも相互関係があります。エンジン、電動、オン、オフ、含め全てのテスト結果を余すところなく共有していきます。

 

Gモト:今後、笠井さんが作りたいタイヤって?

笠井杏樹:1番はレースとして勝てるタイヤを作りたいです。多くのライダーに支持をいただき「このタイヤを履いたら勝てる」と思ってもらえるタイヤを作りたいです。

Gモト:それに必要な事は?
笠井杏樹:もう3年目になるんですけど、やっぱり基礎をしっかり身につける。数値化する事を追いかけきれていないので、日々向上させていかなくてはなりません。まずは先輩方と同様のレベルの基礎を身につけないと、私の強みも出せないと感じています。どれだけの情報量を頭に入れれるかが大切です。

Gモト:仕事する際に「対ライダー」に心掛けている事は?

笠井杏樹:まず、ライダーのコメントをきちんと理解する。聞くだけではなく、その情報があってるのか?という事をコースに見にいってコメントと起きている状況を擦り合わせるようにしています。

 

Gモト:どのような経緯で新商品は誕生するんですか?
笠井杏樹:んーそうですね、シンプルにいうと、レースで得た技術で作ったタイヤをレースで使い、良かったタイヤをそのまま並行移動じゃないですけど市販化する。


Gモト:ファクトリーライダーやテストライダーが使うタイヤが特別という訳ではなく、そのまま市販化されるというイメージですね。

笠井杏樹:そのままではないですが、かなり近いスペックです。ゴムの特徴も近いですし、性能差もほとんどありません。

 

Gモト:現在3年目の笠井さん。描いている開発者像というのはありますか?

笠井杏樹:身近ですけど、私の上司、先輩の皆さんです。1聞いただけで、10できたりするんですよ。やっぱり経験もそうですけど、見るところも違うし、ライダーへのに対する対応を的確。その姿を見て「ああなりたい」って思うんです。

昨年の今頃に書いた笠井さんの記事では、こんな課題がありました。
良い感じをきちんとデータにする。 物理現象として、タイヤから「曲がる力」が何パーセント上がったら「良い感じ」の領域に入るのか? が課題。設計者として独り立ちするには3年から5年と言われています。

あれから1年、2024年レースシーズンが終わり「この課題」に対し笠井さんはどこまで向上したのだろう?彼女が働く環境は、厳しさもあるがとてもアットホームで人材を育てようという先輩や上司、会社がサポートし続けている。ご本人も「環境が良いのでがんばりたい」と話してくれた。

 

取材日の昼食に同期のイケメンを紹介してくれました。その方は、なんと!DUNLOP Racing Team with YAHAGIの長島哲太選手のタイヤを開発していると聞き「鈴鹿で5秒台」のお話を聞かせていただきました。

笠井さんは「仕事もプライベートも楽しい!」と私によく話してくれるんですが、イケメン開発者さんとはプライベートでも仲良しで、他の同期社員さん達とアフター5もほぼ毎日「絶好調!」なんだそうです。

 

住友ゴムさんの社員食堂で昼食をさせていただいたんですが、メニューも豊富(〇〇フェアーもあったり)で美味しい!(上田さんごちそうさまでした!)

 

2025年は4年目となる笠井さん。この「スクスク育つ」環境の中でどこまで開発者を極めていくのか楽しみです!ダンロップさんの「働く環境」って若者の未来が輝ける環境だって最近つくづく感じます。

いかがでしたでしょうか?お久しぶりのビハインド・ザ・ゲート。次回の笠井杏樹vol.5は、さらに開発現場に迫ります。タイヤを開発する「こだわり」に私はビックリ!そして国産メーカーへの信頼度が激上がりしました。
まだまだ続くよ、笠井杏樹さんのビハインド・ザ・ゲート。
ではまたー

取材にご協力いただきました、ダンロップの皆さんご協力ありがとうございます!

ビハインド・ザ・ゲート – The Newsmoto

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