Gモト|ビハインド・ザ・ゲート「笠井杏樹」vol. 3

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2023年最後のビハインド・ザ・ゲート 住友ゴム工業「笠井杏樹」さん。今回は全日本モトクロス選手権第6戦近畿大会にて、開発現場での「開発者として」の仕事内容を取材させていただいています。

笠井さんの「興味深い経歴と背景」は、ライダーが目指すべき1つの形としてご紹介していますので、ぜひVOL. 1を読んでから今回の記事を読んでください。さらに!深堀していただけます。

 

知ってましたか!? タイヤって・・・

オンロードとオフロードのタイヤは違うと皆さん思われると思います。 突き詰めていくと実は同じところもたくさんあります。結局は同じ物理現象で動いていますから、トラクションの掛かる状況は違いますが、タイヤとして求められる事は同じこともあるんですよ。どちらもタイヤに空気を入れて使っています。何のためにタイヤに空気を入れているかというと、荷重を支える事、サンペンションの代わりに緩衝材としての機能を持たせ、結果、推進力を発生させています。そこは同じなんです。

 

今回のタイヤ(全日本モトクロス選手権6戦近畿大会にて)、MX14は路面に刺さるというところを主な特徴としてご紹介しています。 ライダーが刺さると感じているかは別として、タイヤブロックがミドル、クラウン、ショルダーと一列に並んでおり、先端が根元より細い為、路面に刺さりやすく掻きやすい形状になっています。

 

テストライダーのコメントと開発者について・・・

ライダーによってコメント方法は異なりますので、開発者が深堀りをします。どんな挙動の時に、ライダーがそのコメントしたのか分析します。 ライダーのコメントを鵜呑みにしないことが大事だと思っています。コメントを理解できない時、走行を見にいって挙動を観察すると、この事を言ってたんだなという勉強にもなります。

モトクロスタイヤって意外と科学的ではない手法で開発をしていた時期も弊社でもあったようです。ライダーのコメントだけで開発したり。近年は計測機の進化が進んで、様々なデータが計測できるようになったことで、様々な見方ができるようになりました。もちろん、ライダーのコメントは走行しての体感なので、間違いはないと思っています。ただ、どんな挙動のことをそう言っているのかをより深堀りするためにデータを活用しています。

そうですね、例えばジャンプの着地で、タイヤが前に進まないとコメントが出た場合でも、実は前に進むという意味ではベストなタイヤである時があるんです。走行を観察したりよくよく話を聞くと、そのライダーはタイヤが弱いと感じており、それはタイヤのストローク量が多いから弱いと感じていたりします。多いと感じたストローク量、実は前に進む力を路面に伝えるには適切な量だったりします。ただし、ネガティブに感じるのはやはり理由があります。例えばタイヤのストローク量が多いことで、ライダーの操作から実際に車両が動くまでにタイムラグが生まれ、これまでと同じラインをトレースしづらくなり、速く走れないと感じる、とか。そうすると、前に進む力を改善しなければいけないのではなく、タイムラグが生まれないようなやり方を考えないといけません。

 

テストライダーとのデータ照合のお話 ・・・

テストの際にコース上で見る場所は、コメントに出てきたポイントから見ます。開け始めが滑る、寝かし込みで逃げるなど。ポイントがなくコースに走行を見にいく場合は、自分が走っている時に大切だと思っているポイントを見ています。アクセルの開け方や、開け始めと寝かし込み時の車両の挙動など、モトクロスだけで言うと、同じラインを走っている他社サポートライダーさんも見て、違う動きしているな、などと観察しています。

具体的には、開け始めだと音がしているのに横に逃げているのか、そのままトラクションしてコーナーを脱出しているのか。ラインが違うのなら、なんであのラインを選んでるんだろう、とか。そういうポイントを見ています。あと、同じタイヤを使っているライダー同士の比較もしています。

 

笠井さんの課題・・・

良い感じをきちんとデータにする。 物理現象として、タイヤから「曲がる力」が何パーセント上がったら「良い感じ」(笑)の領域に入るのか? が課題。

設計者として独り立ちするには3年から5年と言われています。

 

 

笠井杏樹さんが、ダンロップさんに入社した経緯や背景から仕事に至るまで3回に渡りお届けしてきました。いかがでしたか?
「ライダーが目指すべき1つの形として」ご紹介させていただきました「ビハインド・ザ・ゲート笠井杏樹」さん。

笠井さんと出会った際にお聞きした言葉「勉強とバイクの両立って難しい。学校を辞めてしまう子が多いんです。辞めずに続けて就職し、レースの現場に来る女性を増やしたい。私の活動をダンロップを通じて発信する事で仲間が増えたらと思いますし、今後は私自身も乗って開発していきたいです」。今後の笠井さんの活躍が楽しみじゃないですか!

きっと、まだまだ続くよ「ビハインド・ザ・ゲート笠井杏樹」。

 

ビハインド・ザ・ゲート – The Newsmoto

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笠井杏樹 – The Newsmoto


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