たまモト|2024 vol.2 星野裕選手にこれまでとこれからを語ってもらったよ

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昨年の最終戦で知った星野裕選手の現役引退。裕ちゃんとは長い付き合いだし、なんといっても数少ないSUZUKIを背負って走っていたライダーとして応援させていただいていたので引退は正直ショックでした。けど、お話を伺ってみるとレースを引退したライダーとしては稀有な道を歩まれつつモトクロスの普及にも携わるという第二の道の歩み方が大変興味深く…というわけで「これまで」は軽め「これから」を多めに配分した星野裕選手の「これまでとこれから」インタビューです。

ちなみにお話を伺ったのは今年の1月で記事にするまでにあまりにも時間が経ってしまったため、9月頭に追加でお話を伺いました。ので、1月時点のお話の後に最新のお話が続きます。

 

星野裕選手といえばSUZUKIのイメージが強い pc: RYUPROJECT

<A級時代を振り返って>
たま:裕ちゃんのインタビューめちゃくちゃ久しぶりな気がするんですけど。
星野:しますね(笑)

たま:もっとね、機会があればよかったなって思いますけど、なかなかなくって。
星野:まあ、ライダーの時は忙しくしてたんで。会場でみんなと話をするようになったのは最後の方ですかね。

たま:そうなんだ?じゃあそれまでは会場にいても話をする暇もなく、みたいな?
星野:SRMの時とかにストイックにやることを教わったんで、その時一番成長できたんで、それを信じてずっとやってたというか。なので、会場でもそんなに友達とかをつくらず…じゃないけど…

たま:あ〜そっか「遊びに行ってるんじゃないんだから」っていう?
星野:はい。

たま:それはどなたの指導でそういう?
星野:それは宮内(隆行)さんが。

たま:ああ〜なるほど!宮内さんの指導はそういうストイックであるべきみたいなカンジなんですね。
星野:めちゃくちゃそうでしたね。なので会場で人と話をしたりするようになったのはTEAM HAMMERの時…5年くらい前からですかね。

たま:裕ちゃん、IAで何年?
星野:21年になります

たま:そんなかあ!じゃあ、ほんとに最後の方以外はレースの時は真剣モード…いや、この5年が真剣じゃなかったわけじゃないんだけど。
星野:はい(笑)まあ、真剣は真剣だったんですけど、普段からあんまり人とご飯に行くとかもけっこう控えてたし。

たま:そうだったんですね。それは初耳でした。なんかSRMってみんな仲良しだったから、楽しそうにしてたし…
星野:チーム内は仲良しでしたね。

たま:SRMの中で完結しちゃってたんだね、人間関係が。それで外に友達がいないカンジなのかな〜って思ってたんだけど。
星野:たしかにそういうのも半分くらいはありましたね。

たま:だから寂しいとかもなく?
星野:寂しくはなかったです。みんないつも一緒に行動してたし。

八尾カワサキ&ANNEX CLUB時代 pc: RYUPROJECT

たま:そうだったんですね。なんか20年目にして初めて知る真実みたいな…
星野:はい(笑)あとは、SRMの後にTEAM TAKASEに入って、そこで(田中)教世さんからスポンサーとの付き合い方とかを学んだんですけど、その時は若かったしちょっとよくわかんなかった部分もあって。歳を取る毎にわかってきたというか…

たま:人付き合いの大事さが…
星野:そうですね。だから、ほんと最後の2〜3年が一番スポンサーとか、個人で応援してくれる人もめちゃくちゃ増えたし。

たま:人間関係が外に広がったところがあるんですね。
星野:そうですね。

たま:教世くんのところには何年いらしたんでしたっけ?
星野:2年です。

たま:その後がKAWASAKI…や、これは最初から行こう(笑)私が初めてお目にかかったのがSRMに入られた年、かな?大ちゃん(島崎大祐)と2年で…ただA級はその時2年目?
星野:A級はその時点で3年してて…ブルーイーグルスで。で、4年目にSRMに入りました。

たま:で「SRMにおもろいやつが入ったよ」って北居(良樹)くんに言われて(笑)お目にかかってすぐに「たまレポ」にイラスト描かせていただいたんですよね。
星野:はい、はい(笑)

DIRTCOOL2006年No3「えかきやたまの追っかけレポート」
初登場の星野裕選手
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たま:SRMはそこから何年?
星野:3年ですね。

たま:思ったより長くないんですね。
星野:その後、チームSUZUKIに1年いました。IA2クラスでした。その後がTEAM TAKASEでIA2クラスで2年走りました。

たま:その後がHAMMERかな?
星野:いや、その後がパーク神戸で

たま:あ〜!
星野:むちゃくちゃいろんなトコ行ってますね(笑)僕が行った時には後輩しかいなくて、渡辺涼太とか吉村仁平とか。で、その時にIA1に上がったんですね。そこで2年で、その後うず潮レーシング福山に行きました。KTMに乗ってたんで2014〜15ですかね。

たま:そっかそっか。思ってたよりあっちこっち…
星野:僕、めちゃくちゃ移籍してます(笑)で、2016〜18年はKAWASAKIに戻って八尾カワサキ&ANNEX CLUBっていうチームで

たま:植田くんとかいた時かな?
星野:そうです!植田翔太(笑)で、その後の2019〜20年がTEAM HAMMERですね。その後2021年からSBEで。ちょうど21年走る時から実家のある福山に帰ってきて、去年まで3年SUZUKIで走ってました。SBEは一回全日本参戦をやめてて僕が帰って入るってなったらまた全日本に行き出したってカンジです。

たま:で、福村(鎌)くんが一昨年…
星野:そうですね一昨年から一緒になりました。

たま:いろいろなメーカーに乗ってきてますね(笑)
星野:そうですねYAMAHA以外全部行きました。

たま:なんだかティム・フェリーのようだ(笑)
星野:いやあ(笑)それは光栄ですね。

たま:いや、でも人柄の柔らかさとかもティム・フェリーっぽいですよ。
星野:ほんとですか?!なんか昔、ブロック・ティックルに顔が似てるとか言われましたけど。ティム・フェリーは初めて言われました。

たま:ティムはね、人柄のカンジといろんなメーカーに乗ってるっていう…
星野:ああ、そうなんですね。

たま:今改めて聴いていろんなチームいろんなメーカーで走っててすごいなって思いました。
星野:まあでも身体的に…年齢的にも、去年か一昨年くらいからあんま成績も出ないし怪我もちょこちょこしたし…その割にはよく頑張れてたかなと思ってますけど。

会場で始めてお目にかかった時の星野選手、初々しい pc: ekakiyatama

たま:おいくつになられました?
星野:昨年12月で38歳ですね。17歳が1年目だったんで21年になりますね。

たま:私、会った時大学生だったもんね。
星野:そうですね、はい。

たま:人に歴史ありですねえ。でも、やっぱり裕ちゃんっていうとSUZUKIのイメージが強くって、あとやっぱり広島のイメージが強かったので…弘楽園で毎回「地元ライダー」って紹介されて。
星野:はいはい、やっぱコースは広島が得意でしたね。

 

地元広島に戻ってSBEからSUZUKIに乗って参戦 pc: RYUPROJECT

<引退のきっかけ「今年までかな」ってビビッと来ちゃったんですよね>
たま:今回、2023年で全日本のレースをお辞めになるっていうのは体力的なものなんですか?
星野:僕的には体力っていうよりは、気持ちがちょっと続かなかったかなという所が。なんかやっぱ、ある程度モトクロスライダーとしてバイクのテストとかそういうモトクロスの仕事に携われてた時期とかは自分で出すお金もあんまりなくて生活もギリギリできてたしモチベーションはあったんですけど、終盤になってくるにつれて持ち出しっていうかレース出た方がお金かかってるみたいなカンジになってきて…

たま:これ趣味じゃんみたいになってくるんですよね。
星野:そう、趣味じゃんってなって、そうすると頑張る気持ちっていうのが連動しなかったというか。それが一番ですかね。あとは気持ち的に「今年までかな」ってなんかビビッときたんですよね。

たま:自分の中でけじめがついちゃったみたいな?
星野:はい。最後の最後までやるかやらないか迷ってたんですけど、でも、そのビビッが忘れられなくて。これで続けてやってまた怪我とかしたら「やめれば良かった」とか思いそうで…ってことはもうやめ時なのかなと。

たま:なるほどねえ

<家業の老舗「無憂館」を継いで>
たま:今ざっとIA走り始めてから引退されるまでを伺いました。去年の最終戦で「やめますよ」とあちこち挨拶に回ってらして、でも今SNS見てるとスクールやったり忙しそうになさってます。今現在は何をされてる人になるのかな?
星野:一応、メインは実家の「鮎の甘露煮」屋。あれを父がやっていたのでそれを継ぐみたいな形で。

たま:お店の名前を検索したらすぐに出てきたりします?
星野:「無憂館」って言うんですけど「鮎の甘露煮・無憂館」で出てくると思います

たま:ほんとだ!一発で出てきました。
星野:(笑)ネット販売とかもしてるんで。

たま:え?ちょっと待って、すごい!創業明治35年!!創業して121年!
星野:そうなんですよ(笑)。最初は旅館かなんかだったらしいですけど。

たま:そうなんですね。それで今は鮎の甘露煮を売っておられる?
星野:作るところからやってます。今、府中と福山の2店舗あって、家族とあと従業員は1人くらいしかいないんですけど。

たま:そうだったんですね。全然知りませんでした。感動してます、今。
星野:(笑)それこそ、ちょうど今日は製造する日で。鮎は贈り物が多いのでレースシーズン終わったのがちょうどお歳暮の時期と重なってて(引退して)いきなり忙しかったんで。最初はちょっと親父と言い合いになりながら「まだ作れんのんか!」みたいなカンジで、そりゃ最初からできるわけないんですけど…職人みたいなことやるんで。製造の工程が2日とかかかるんですけど、今日出来上がった分はもう「自分で作ったぞ!」って言えるくらいになりました。

たま:今、買ったら裕ちゃんが作ったヤツが買えるんですね?
星野:そうです(笑)

たま:うちは2人家族でたくさん食べられないんだけど、通販にちゃんと小さいやつがある…
星野:そうですね、2尾入りからあるので。

たま:早速買いますね。家業は、昔からお手伝いをされてたんですか?
星野:昔から手伝いはしてたんですけど、モトクロスを一生懸命やっていたので、手伝いっても全然簡単なことばっかりで。なので、作るのは一から修行というか学んで、ようやくもう大丈夫かなくらいにはなったところですね。

たま:では、今回出荷されている分っていうのが最初から最後まで携わられた商品という…
星野:そうですね、ちょっと前から僕がつくったやつに変わったっていう。

たま:おお!これは記事にする前にSNSで発信しとかないと間に合わない。
星野:お願いします。

たま:じゃあ、イラストは鮎の甘露煮を持ってる姿で決まりですね。
星野:それめっちゃいいっすね!(笑)うちは昔から、男は製造、女は店で販売というカンジだったんです。1月とかは鮎はそんなに出ないんで「男も店番できるようになれはいいじゃん」って僕から提案して、結局先週からレジデビューしたんですよ。

たま:イマドキですね。では、店員さんほやほやなカンジで?
星野:はい、店員さんほやほやでどっちかというとそっちのほうがまだオドオドしてますね (笑)

たま:本店の方にいらっしゃるの?
星野:いや、もう行ったり来たりなんですけど。どちらかというと本店の方に行く係になってます。

たま:じゃあ、福山行ったらまず鮎の甘露煮を買いに無憂館に来てくださいですね。
星野:ほんとにそうなんですよ。

たま:いやあ、意外な話がまろび出てきました。鮎ってシーズンはどうなってるんでしたっけ?
星野:いや、天然ではもう全然間に合わないので養殖なんです。なので年中安定して売っているんですけど。元々、鮎の甘露煮は府中本店の府中名産なんですよ。で、後から福山店ができたんですけど、今現在工場があるのは福山なんで福山で作ったのを府中に持っていくみたいなカンジですね。

たま:HPに「元料亭の味を継承して」って書いてある…
星野:そうなんですよ、元は料亭してたんですけど…

たま:いや、すごいよね…
星野:すごいからがんばらないと。

たま:裕ちゃん、お坊ちゃんだったんだね。
星野:僕は一応お坊ちゃんですね(笑)

たま:じゃあ、モトクロスやってなかったらそれこそ老舗の坊(ぼん)だったんですね。
星野:モトクロスを長い事やったのが良かったのか、もうちょっと早くこっちに来たほうがよかったのかわかんないんですけど。まあでも、モトクロスの「限界まで出し切る」っていうのかな、そういうのとか人との付き合い方とか、それは今に生きてるかなって思います。

たま:それは、引退した後様々な方面に行かれた方がみなさんおっしゃいますね。
星野:やはりそうなんですね。モトクロスも最後の方はお金もかかってたんで、地元に帰ってきたってこともあって、スポンサーもモトクロスじゃないとこにいきなり突撃して「お願いします」って言った事もけっこうあったんです。それこそ何軒に1軒相手してくれたらいいなってカンジだったんですよ。今、たまに営業にも行くんですけどモトクロスのポスターとか貼ってくださいとかいきなり「お金出してください」って言いに行くのよりは、鮎のポスター置いてくださいとかこういう商品があるんで、とか言う方がめちゃくちゃ楽ですね(笑)

たま:モトクロス時代のハードルが高かったから今はハードル低いなって?
星野:はい(笑)モトクロスだとまずモトクロスって何かを説明しないといけないんで…僕、まだ一般社会に出て3ヶ月なんであまり大きいことは言えないですけど、モトクロスをわかってもらうよりは鮎の方がよっぽど簡単ですね(笑) モトクロスを説明してお金をだしてもらうのはすごく大変なことなんだなって思いました。

たま:鮎もずっとやってたら大変なことは出てくるんでしょうけどね。
星野:そうですね。

 

うず潮レーシングではKTMを駆った pc: RYUPROJECT

<家業を続けつつモトクロスにも携わって相乗効果でがんばりたい>
たま:そうやって無憂館のお仕事をされつつの、スクールなどを続けてらっしゃる?
星野:そうですね。スクールも今までよりは時間が取れるので、平日はちょっと無理ですけど土日とかでなるべくしようと思ってて。現時点で以前よりはたくさんやってるんですけど。ありがたいことに定期的に「やってよ」と終われるんで。現役の時にまず手始めにやってそこから2年くらいやって、23年の12月からは走行会をやってみようってことになってビギナー向け…NBくらいまでのレベルの人ばっかりで走行会をやったんです。そしたら4〜50人集まってくれて2月に第2回を四国の方でやるんですけどそちらも参加者が20名くらいいるんで、そういうのもがんばってやってます。

たま:そもそもスクールを始めたのはいつ?
星野:スクールを始めたのは2022年だったかな。自分で始めようと決心したわけじゃなくて「そういうのやったほうがいいんじゃない?」って人から言われて。自分的には「そんなんしても人なんか1回しか来んじゃろ」みたいに思ってたんですけど、1ヶ月とか2ヶ月に1回してたら人ってそれなりに来るんだなって思って。

たま:どういった方が来られるのかしら?
星野:おじさんが多いんですけど…大人になってモトクロス始めた人が多いですね。あとは女性も結構来るし子供も来ますね。

たま:モトクロスバイク買って乗ってるけどなかなか上手くならないしちょっと教えてもらおっかな、みたいな?
星野:ああ、そういう人が多いですね。始めたけどどうしていいかわかんないやみたいな。

たま:そういう人たちが楽しく安全に乗れるように?
星野:そうです!マンツーマンから多い時は10人くらいまで教えてるんですけど。例えば中国戦主体でコーチングしてほしいとか。意外と「友達と来たい」って人も多くて。ひとりだと緊張するんですかね。わいわいグループでスクールしてる時もけっこうあります。

たま:楽しんでもらいつつ、みたいなカンジですね。なんならスクールで鮎も売っちゃおう(笑)
星野:そうですね(笑)(家業の)鮎をやってることがモトクロスはもちろん教えることにも繋がってるし、モトクロスを教えることが鮎を売ることにも繋がっていると思うんで、そういう相乗効果でがんばりたいと思ってます。それこそ鮎も僕が入り込むまでは営業とかあんまりしてなかったんですよ。今度、家の近くで食のイベントがあるんですけど、それに初めて出店することになって。そういうところから卸先をだんだん広げていけたらなあって思ってます。

たま:それもやってスクールもっていうとかなり忙しいことになってますね。
星野:ありがたいことに日曜日がだいぶ埋まってきてて(笑)

たま:そういうところで知ってもらうのはだいじですもんね。
星野:そうですね、まず知らない人が多いと思うんで。

たま:そのへんもモトクロスに通じるという(笑)
星野:たしかに(笑)今後は自分の色を出していきたいと思ってて、府中店のディスプレイにカラーズさんに塗ってもらったヘルメットを飾ったりしてます。

たま:それって来店された方とのお話のきっかけになるよね。
星野:そうかな〜と思って(笑)こないだインスタのプロフィールも「鮎の甘露煮作るプロライダー」に変えたんですよ。

たま:あ、ほんとだ!(笑)スクールのことも書いてある。じゃあ、裕ちゃんから教わりたい人はこちらから連絡してもらえばいいんですね。
星野:そうですね。

 

TEAM HAMMER時代 pc: RYUPROJECT

<これからの展望>
たま:「ライダーの第二の人生」としては溝口てっちゃん(溝口哲也選手)とかに近いカンジですかね。
星野:そうかもしれないです。

たま:じゃあいつかはあんな風に社長としてバリバリやって…
星野:はい、そうなれたらいいなって思ってます。ゆくゆくはコラボとか新しい商品とかも開発したいんですけど、今はまず昔からの味を大事にしてどんどん勝負していきたいなとは思っていて。

たま:若旦那として経営とかもこれから考えていかなきゃだし、そういうのを考えるのも楽しいカンジですか?
星野:そうですね。今は、店番から製造から全部…細かいこと言ったら今日ナンボ売れた…から現金出納帳って言うんですか、あれを書いたり…最近始めたとこなんでまだ全然わかってないんですけど。

たま:経営者1年生なんだ。
星野:ほんとそうですね。モトクロスやめてすぐはめっちゃ不安だったんですけど今はちょっと気分は落ち着いたかなってカンジですね。

たま:今まで引退された方の話を幾人も聞いてきたんですけど、中には「今まで勝つことを目標に生きてきたから、やめた後、次に何をしたらいいかわからない」っていう人もいらしたんです。これはA級になるような方達ほどそうだと思うのね。打ち込んできた熱量がすごいからやめた時に途方に暮れてしまうというか…でも、裕ちゃんの場合は次にチャレンジすることがガツンとあったわけだから。
星野:そうですね、決まってたのが逆によかったのかなあとは思いますね。今、鮎を作ることが好きか?って言われたらまあそりゃあモトクロスの方が好きですけど、新しいことにチャレンジしていくことは楽しいので。今までモトクロスに使っていたエネルギーは「鮎を作る」だけでは完全燃焼できない所があるんですけど、そういうイベントに出店するとか営業に行くとか今まであまり家族にしてなかったコトにも注いでいるというか。

たま:ゆくゆくは経営者になるわけだから。モトクロスもライダーが1人で走るわけじゃない、いろんな人に支えられて…それと同じようなことをやってくわけですよね。
星野:ほんとそうですね。1人じゃ全然なんもできないんで。モトクロスの時もそうだったと思うんですけど、チーム変わってもずっと周りの人に恵まれてたなと思ってて。すごいそれに感謝していますね。そういえば明日、中国選手権で見るコの事前練習で山口に行くんですけど、今日まで鮎作ってたんで明日からまたモトクロスなのは新鮮で楽しみですね。

たま:いい感じに気持ちが切り替わっていいかもしれないですね。
星野:そうですね(笑)

といったお話を伺って8ヵ月、記事にするのがすっかり遅れてしまったので現在の様子を伺ってみました。

 

幾つになっても柔らかなはにかみ笑顔がチャーミングですね pc: ekakiyatama

<そして現在>
たま:最初にお話を伺ってから随分時間が経ってしまってごめんなさい。
星野:いえ、大丈夫です(笑)

たま:お仕事から帰ってきた所ですか?
星野:いえ、今日はトレーニングをみんなでする日で。

たま:てことは相変わらず仕事にモトクロスにってカンジなのね。
星野:そうですね。

たま:鮎のお仕事の方も順調ですか?
星野:僕、こないだどういう話をしてましたっけ?

たま:ちょうど私がお話を聞いた頃に最初から最後まで全部作れるようになった所だから今出荷されてるやつは裕ちゃんがつくったやつなのね〜みたいな話をして。
星野:ああ!(笑)それに関しては今はもう余裕で普通に作ってます。

たま:あとは営業に行ってらっしゃるっていう話も。イベントに出店したいっていう話もされてて…他には現金出納帳とか始めててまだよくわかってないですとか。このへんはどうなんですか?だいぶいけるようになったんですか?
星野:それはもうだいぶ大丈夫です(笑)

たま:この半年でだいぶ若旦那業が板についてきたカンジなんですね。
星野:そうですね(笑)あの頃は卸先を増やしたいとか言ってたと思うんですけど、今時点でけっこう増やせていて。東京の神田とかでも売ってるんですよ。

たま:インスタにありましたね。神田小川町のアンテナショップNEKIさんで「鮎の甘露煮」のお取り扱いが始まりましたって。
星野:そうなんですよ。そこは大成功というか…そこには僕が営業かけたんですけど、元々が広島県府中市のアンテナショップなんで道のりとしてはわりとすんなりと置いてもらえることになって。そこからもっと広げたいなと思ってます。今の近い目標としては東京とかのデパートにお中元お歳暮の時だけでも出店できたらいいなと。目標はそんなカンジで。まず認められないと置けないとは思うんで。

たま:なるほど。お話を伺ってる限りだとだいぶ家業の方に軸足が乗ったカンジですね。
星野:そうですね。前に言ったかは覚えてないんですけど、モトクロスって楽しいのは一瞬なんで結果が出たとしても出た時は楽しいですけどその後はまたいつものことを考えて上を目指してやっていくカンジなんです。今の仕事も結果が出たら同じように楽しい…楽しもうとするのが上手くなったのかもしれないんですけど…

たま:お仕事の方が、結果というか手応えが大きいのかもしれないですね。
星野:そうですね。あとはモトクロスをやってたからこそ、そういう風に楽しもうとするんじゃないかなと。寒くても暑くても練習に行く時は行かなくちゃいけないしそれをつまんないって言っててもどうしょうもないしなんとか楽しいところを発見しようとするのが上手くなったのかなと。

たま:そういう「楽しいこと探し」が上手な所がお仕事でも発揮されているという?
星野:気づかないうちにそういうことをするのが上手くなってたかもしれないとは思いますね。

たま:そういえば無憂館の紹介動画で「伝統の味は長男しか知らない一子相伝」っていうのが出てきたんだけど、そうすると裕ちゃんが一子相伝の相伝された人になるの?
星野:そうですね。

たま:っていうことは裕ちゃんがまた自分の子に相伝しないといけないんだ?
星野:そうですね(笑)そこはたいへんですね。そこまではまだちょっと考えられてないです。鮎の甘露煮は元々府中のお土産としておじいちゃんやお父さんががんばって有名にしてくれているんで、僕の場合はゼロからのスタートじゃなかったんですね。そういう意味では最初からやりやすかったのはあります。

たま:そうやって地元では知る人ぞ知るだったものをこれから更に大きくしていくのはたいへんだよね。
星野:はい。

たま:そうやって家業に精を出してらっしゃると全日本の会場においでになるのはちょっと難しいカンジ?
星野:そうですね。でも、名阪は家族で観にいきますし、オフビは下田丈選手を観たいので…ちょうどバイヤーと東京で会う機会が9月か10月の予定なんでそれを無理やり下田丈選手が来る日に合わせれば…とか考えてます(笑)

たま:それはいいですね(笑)では会場でお会いできるのを楽しみにしています。
星野:はい、ありがとうございました。

というわけで、星野裕選手の今までとこれからのお話、老舗の跡取りという今までにちょっとなかった方向性にびっくりしつつ興味深くお話を伺いました。インタビュー中にも触れましたがトップライダーであるほど引退されてからの方向性に迷われる方が多い中、長年の伝統を背負うという道を選ばれた星野選手。そんな彼の第二の人生にもモトクロスに打ち込んできたことがきちんと役立っている…というのが興味深かったです。ちなみにこの後(というかこの時すぐに)通販で購入した鮎の甘露煮はたいへん美味でございました。おかずによし、酒の肴によしの逸品、通販はもちろん地元広島の店舗や東京のアンテナショップなどでもお買い求めいただけますので、機会があったらぜひ!

 

【星野裕インスタグラム】
https://www.instagram.com/yutakahoshino123/

【無憂館】
https://www.muyukan.com/

【鮎の甘露煮取り扱い店・広島県府中市アンテナショップNEKI】
東京都千代田区神田小川町1-3-1 NBF小川町ビルディング1F

たまモト – The Newsmoto


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