Gモト|ビハインド・ザ・ゲート「笠井杏樹」vol. 6

ビハインド・ザ・ゲート 住友ゴム工業株式会社 笠井杏樹」さんvol.6。「開発者として独り立ちするには3年から5年」と言われている日本が誇るタイヤメーカーダンロップさん。開発者がスクスク育つ環境の中でどこまで開発者を極めていくのか。笠井さん、この4月から「4年目」となり新たな局面に。vol.6では3年目の振り返りと4年目の抱負に迫ります。

写真はちょうど1年前の熊本HSR九州。3年目が始まり取材前にいつもの笑顔で撮影。ここで笠井さんとの出会いと、笠井さんの経歴を振り返って再確認してから本編に入りましょう。 2022年の全日本モトクロス第6戦関東大会で笠井さんと出会いました。全日本モトクロスでお会いする女性スタッフさんで ”技術屋” さんというのは稀。技術屋さんというだけでも興味深いのに、お話を伺っていくとさらに興味深い経歴をお持ちでした。

当時23歳、入社1年目。「バイク歴は高校3年生18歳からで、6年目」、そして「TOHO Racing Club」からST600に参戦するロードレーサー。バイクに乗り始めて6年でここまで駆け上がり、世のバイク女子の皆さんとクロスオーバーする夢があり、この時「私は国立の高専に入学しました。勉強、テストもありバイクとの両立も大変でした。でもバイクがあるから勉強もがんばれましたし、バイクが楽しかったので18歳から現在まであっという間でした。」と苦労を苦労と厭わず、イキイキニコニコ話をしてくれ、聞いている私も自然とニコニコしてました。 とても「興味深い経歴と背景」はリンク先からご確認ください。笠井さんの行動には「男女問わずライダーとしての選択」が詰まっていて、見習う事や、参考になる事が多くありますよ!!

リンク先から笠井さんの「興味深い経歴と背景」読んでいただきましたか?バイタリティー溢れる行動力。そして「勉強とバイクの両立って難しいので、学校を辞めてしまう子が多いんです。辞めずに続けて就職し、レースの現場に来る女性を増やしたい。私の活動をダンロップを通じ発信する事で仲間を増えたらと思います」という笠井さんの想い。この想いを聞き、「ライダーが目指すべき1つの形」として私もこの想いを伝えたい、伝えなきゃならないと考えました。
笠井さんとの出会いがきっかけで「ビハインド・ザ・ゲート」というこの企画が始まったのです。

4月12日土曜日。全日本モトクロス選手権シリーズの開幕戦が開催される、私の大好きなHSR九州で数カ月ぶりに笠井さんと再会。レース前日、準備に忙しいところ時間を作っていただきお話を伺いました。
Gモト:お久しぶりです。元気にしてましたか?
笠井杏樹:お久しぶりです。今日はマスクしていてすみません。
Gモト:どうしたの?
笠井杏樹:んー風邪か花粉症か・・・。
Gモト:インタビューには支障なしです。大丈夫!
笠井杏樹:久しぶりのインタビュー、怖いです・・・。
Gモト:大丈夫。まずは、走る開発者3年目を振り返っていきましょう。課題は「基礎力向上」だったんですが、振り返ってみるといかがですか?
笠井杏樹:そうですね、大体の仕事はできるようになってきました。設計者としてはまだまだです。設計者として「この現象が起きたから、こう変更する」という部分では・・・全然成長できていない3年目だと考えています。
Gモト:成長できなかった!?
笠井杏樹:はい。
Gモト:それはどうして?
笠井杏樹:自分でも、わからないんです。成長できなかったというか、成長できているのか?できていないのか?不安で。上司から評価していただくのは「僕達が考えているレベルには成長してくれています」とは言っていただけるんですけど、私からすると、できる事は増えたんですけど、目に見えて成長はしてないんじゃないかと不安に思っています。

Gモト:その不安を安心に変えるために、自身で取り組んでいる事は?
笠井杏樹:もうなんだか社会人みたいな事を言ってるんですけど、今担当している仕事を可能な限り早く終わらせ、新しい仕事にどんどんチャレンジできるようにしています。多くの仕事をこなせるようになる時かと考えています。
Gモト:昨年お聞きした「納期を伸ばしがち」という事はどうなりました?
笠井杏樹:納期伸ばしがちなのは変わらないんですけど、仕事量が増えててきているので、タスクを早く終わらせるように日々努力しています。

Gモト:上司の皆さんに評価していただいている事柄を、ご自身で体感できていますか?
笠井杏樹:体感している事は本当に少なくて、だから不安に思っているんです。仕事量は以前より多くこなせるようになっていて、納期もそれなりに守れています。現在の仕事量を考えると、仕事が以前よりはできるようになってるのかなって思えます。だからと言って、1人でタイヤを作れるかって事にはなりません。
Gモト:ダンロップさんの社内で「独り立ちには3年から5年」と言われているのですが、詳しい詳細は私にはわからないんですけど、上司の皆さんから見たらスクスク育っているって事ですね。
笠井杏樹:そう思いたいです!
Gモト:その不安を家に持ち帰ってますか?昨年、私がダンロップさんに伺った時、「アフター5」も楽しんでます!って言ってたじゃないですか。現状はどうですか?
笠井杏樹:今も仕事が終わってから楽しいんでいるのは変わりません。でも、お風呂に入っている時とか休日とかに「パッと」考える時間は増えました。
Gモト:以前よりも増えました?
笠井杏樹:増えました。
Gモト:それって成長してるからかなぁ?
笠井杏樹:どうですかね?仕事の事を考える時間は多くなりました。
Gモト:3年目も今も真剣に仕事に取り組んでいると思いますが、今現在の笠井杏樹から見た「1年前の笠井杏樹」はどう見えますか?
笠井杏樹:んー・・・悪く言うとあの頃は楽しかった。責任もなかったし、今もそうなんですが、わからない事はわからないって言えば良かった。言いやすかった。今は自分自身で必ずどうするか考え、考えてもわからなかったら聞きます。ただ、こんな事を聞いて申し訳ないですって思う事も多いんですけど・・・。
Gモト:昨年、ヤマハファクトリーレーシングチームの吉田奈都美さんと対談したじゃないですか。その時にこんなやり取りがあったの覚えてますか?…
Gモト:他に聞きたいことある?
笠井杏樹:自分の意見を伝えるときに、男性に伝えづらい事はありますか?
吉田奈都美:ないです。きちんと伝えます。笑
笠井杏樹:私はたまに言いにくい時が・・・言っちゃえば良いのか!言っちゃおう!笑
吉田奈都美:それは真剣そうだから言いにくいの?自分の立場的に?
笠井杏樹:どちらの時も。
吉田奈都美:もちろん、私も頃合いは見ます。今聞いちゃダメかなという時は言わないですけど、基本的には伝えた方が良いと思います。
笠井杏樹:・・・見習おう。
吉田奈都美:笑笑
笠井杏樹:覚えてます!その日に聞いたお話もそうなんですけど、吉田さんからアドバイスをいただいて、私もきちんと伝えるように、気になった時に伝えるようにしたら、きちんと仕事が進むようになりました。自分で悩む時間が勿体無いなって思うようになりました!良いアドバイスをいただいたなって思っています。

Gモト:今日、私が聞いていてもステップアップしてるんじゃないかって思います。
笠井杏樹:してますか?
Gモト:してますよ。
笠井杏樹:良かった。色々な課題、新しい取り組みをさせていただいているので感謝です。良い機会をいただいているなって思います。プレッシャーもありますけど・・・できるのかなって。
Gモト:良い環境ですね!20代、ガンガン頑張れる時ですよ。
笠井杏樹:そうですね、全てを自分のために注ぎ込める時間やし、成長する為に頑張れます。
Gモト:今シーズンは「笠井杏樹4年目」を深堀に深堀をしていきたいと考えています。笠井さんの定年までやりきりたいくらいの勢いです。4年目の抱負は?
笠井杏樹:4年目の抱負。これ1番大事ですよね!笑
Gモト:そう、大事。笑
笠井杏樹:4年目の抱負は・・・そうだな・・・取材内容のメールをいただいてから考えてたんですけど。
Gモト:考えてください。笑
笠井杏樹:んー・・・・・・・・・具体的に言うと、現象に対しての対応とか構造とか、こういう現象が起きたから、ここを変更するべきという対応を即座にできるようになりたいです。
Gモト:それは昨年も聞いた気がするんだけど、それがタイヤの開発に関して重要な事柄なんですね。基礎力向上。
笠井杏樹:私は基礎力が不十分なんです。
Gモト:それに対する課題は?クリアーするプロセスは?
笠井杏樹:プロセスがまだ繋がってないんです。なるべく、なんて言ったら良いんやろ・・・やった事に対し、何が変わったのかという事をインプットする。なんて言うんやろ、N数を増やす。
Gモト:N数って?
笠井杏樹:経験値を増やしていく・・・回答になってないなこれは。すみません。
Gモト:今は過渡期だから、もがいても良いじゃないですか。今の楽しいが開発者として独り立ちして楽しいって思えるまで。
笠井杏樹:結構、苦しいなって思う時は多いんです。
Gモト:だから、独り立ちするまで3年から5年なのかな。
笠井杏樹:はい。うん、きっとそうですね。

Gモト:笠井さんの経験値を増やす為には?
笠井杏樹:私が担当している開発だけでは、やっぱりライダーのコメントであったりが少ないので、上司とコミュニケーションを取り「レースでタイヤのここを変更した」、「じゃあここを変えたらライダーのコメントは?」とか、ライダーだけではなく台上値(テスト項目)などの数値との照らし合わせ作業を、私のタイヤだけではなく、レースで使っているタイヤだったり、他の開発者が開発しているタイヤだったりとフォローしています。
Gモト:笠井さんの担当タイヤだけではなく、さまざまな開発にも関心を持ち経験を積んでいくんですね。
笠井杏樹:そうなんです。
Gモト:5年目をどう迎えたいですか?
笠井杏樹:んーそうですね、5年目を。
Gモト:ある意味タイムリミットじゃない。
笠井杏樹:んー・・・。
Gモト:1年後、5年目を迎えるインタビューを、どのように迎えられたら良いんだろうね?
笠井杏樹:もっとこう、今は私たぶん客観的に見て「部下」って印象だと思うんです。私ではなく、上司に聞いた方がきちんと回答が返ってくるという感じやと思うんです。お客様やライダーの方が相談に来ても、きちんと回答できる人になりたいと思っています。
Gモト:そうありたい?
笠井杏樹:そうありたいです。1年では難しいかなって思うんですけど、できるだけ早くそうなりたい!
Gモト:そうなりたいと思う「私に」なる為に気をつけている事は?
笠井杏樹:そのままにしない。わからんままでも仕事になるんですけど、その、わからんなっていうのをすぐ聞くように心がけています。
Gモト:笠井さんの目指す開発者は?
笠井杏樹:先程、お答えした事と同じになってしまうんですけど、ライダーやメーカーの方から信頼され、明確な回答ができる開発者になりたいです。

今年を「漢字一文字」で表してくださいというリクエストに「強」。皆さんご存知の笠井さんの経歴を見れば、充分に「強」だと思うんですが・・・。さらにという事なんでしょうか?独り立ちに向かって突き進む笠井さんの今後が楽しみです!!

「スクスク育つ」環境で、笠井さんがどこまで開発者を極めていくのか、4年目となる笠井さん自身が輝く事で「ライダーの安全と楽しさ」が向上し、たくさんの笑顔が増えていく。ダンロップさんの働く環境は、若者の未来が輝ける環境だって事を記事を書きながらさらに!感じます。笠井さんの活躍がモーターサイクルライフを楽しくする! まだまだ、まだまだ続くよ、笠井杏樹さんのビハインド・ザ・ゲート。
取材にご協力いただきました、ダンロップの皆さんありがとうございます!
GSPEED-TOKYO
Gモト – The Newsmoto
笠井杏樹 – The Newsmoto







