Gモト|ビハインド・ザ・ゲート「小島庸平」vol. 6

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ご好評いただいておりますビハインド・ザ・ゲート鈴鹿編。今回は2006年IA2、2015年IA1クラスチャンピオン小島庸平選手 vol.6。

小島選手、今シーズンもスポット参戦しながらプレイングマネージャーとして、ホンダサテライトトップチームとして活動する「ベルズレーシング」を運営されながら、モトクロス業界の原点からトップカテゴリーまでを網羅し業界を盛り上げています。モータースポーツ都市宣言されている鈴鹿市生まれ鈴鹿市育ち。

Gモト:全日本モトクロスの歴史の中で、名実ともにトップライダーとして長年にわたりファンを魅了してきた小島選手。1985年生まれ40歳を迎えた今なお、第一線で戦い続けています。第3戦関東大会では、腰を痛めながらも決勝ヒート2では好スタートから前半4位を走行。「6位以内入賞もあるのでは!?」と会場が沸き立つ熱い展開を見せ、ベテランらしい意地と底力を感じさせてくれました。これまで幾多の激戦を乗り越えてきた小島選手。なぜ今も、身体の限界と向き合いながら走り続けるのか。その理由は以前にも伺った事がありますが、40歳という大きな節目を迎えた今、改めてその胸の内をお聞きしました。
小島庸平:走り続ける理由はいくつかありますが、大きな理由の1つは「チームのため」です。今のチームは自分自身で立ち上げたものでもありますし、その存在自体が僕にとって大きなモチベーションになっています。僕はワークスライダーではないので、ワークスライダーのように「勝つ事」が仕事ではありません。でも僕には、応援してくれているスポンサーの方々、支えてくれる人達がいて、その人達のために走るというのもあります。年齢的に厳しさはもちろんありますが、40歳だから特別という感覚はなくて、求められている事に対し、今の自分に何ができるか。それだけを考えて走っています。だからこそ、誰のために走っているのかと聞かれたら、迷わず周りの人達のためと答えます。

 

Gモト:そのモチベーションは未来のモトクロスのために?

小島庸平:いろんな意味でのモチベーションはあるにはあるんですが、正直なところ「これがモチベーションだ!」というものは、もうとっくに無くなっています。むしろ、今は「ないからこそ続けられている」のかもしれません。

Gモト:モチベーションがない!?
小島庸平:僕は「モチベーションがないからこそ走れている」って思ってるんです。逆に、強いモチベーションがあったら、もうとっくに辞めていたかもしれません。多くの人は、勝つためにやってるんでしょ?とか、目標があるから続けられるんでしょ?って決めつけるけど、実はそうじゃない生き方もあって良いと思うんです。モトクロスに向き合う形って、もっと自由であって良い。モチベーションがなくても、ただ走りたい、続けたい、そういうスタイルがあっても良いんじゃないかって思っています。何のためにやってるの?っていう問いに、必ず明確な理由や目標がなきゃいけないっていうのは、僕はちょっと違うんじゃないかなって。

Gモト:モトクロスが好きだから、レースが好きだから走ってるっていう。

小島庸平:言ってしまえば、僕が今走っているのは、皆さんが趣味でバイクに乗っているのと同じ感覚なんです。それってモチベーションあるの?って言われたら、特別なものはないかもしれないけど、楽しいから乗ってる。ただそれだけ。もちろんレースだから勝つためにやってるんでしょ?って思われがちなのは分かってます。でも、僕にとっては、そうじゃなくても良い。ただ純粋に走りたいから走る。それって、週末にバイクに乗って楽しんでいる皆さんと同じで、モチベーションもその延長線上にあると思ってます。

 

全日本モトクロス選手権第3戦21グループカップでは、決勝ヒート2で好スタートから前半4位を走行。「もしかして!」という期待をレースファンに魅せてくれました。

 

メカニック氏、思わず笑顔。

 

関東大会決勝ヒート2ゴール直後の小島選手。素敵な表情でパドックに戻ってこられました!「ただ純粋に走りたいから走る」、小島選手には、その場所が全日本モトクロスというだけで「僕が今走っているのは、皆さんが趣味でバイクに乗っているのと同じ感覚なんです」という言葉が改めてこの写真から伝わってきますね。

 

Gモト:今後、監督として目標、見据えている事は?

小島庸平:目の前の目標は様々あります。例えば、吉田には世界で戦ってほしいし、大倉にもネイションズでトップ10に入ってほしい。そういう1つ1つの目標はたくさんあるんです。でも、その根底にあるのはやっぱり「モトクロス人口を増やす事」、「モトクロスという競技をもっと多くの人に知ってもらいこの業界を盛り上げる事」なんです。そして、監督としての大きな目標は、所属ライダー全員が全日本チャンピオンになる事、そして世界でも活躍できるようになる事。これは、僕がこの仕事を続けている限り、ずっと追い続ける目標だと思っています。

Gモト:吉村太一さんのようですね!

小島庸平:そう、これはもう一生続く事なんです。だから僕は、それを育て続けていく事が自分の仕事なんだと思っています。ライダーを育て、チームを育て、モトクロスという競技自体を育てていく。それが自分に与えられた役割なんじゃないかと。よく「何のためにやってるんですか?」って聞かれるんですけど、僕にとってはそれって、ちょっと愚問に近いんですよ。もちろん、悪い意味じゃなくて。例えば、皆さんが毎日会社に行く理由って、特別なモチベーションがあるからって訳じゃないですよね?それと同じで、僕にとってはもうこれは使命とか義務に近いんです。だから、モチベーションがあるのかっていうよりも、やらなきゃいけない事だからやってるっていう感覚に近いです。今後も、その使命感を持って、この道を進んでいくしかないと思っています。

 

その活動の原点、小島監督が中心になり、鈴鹿ツインサーキットで活動しているクラブベルズ。対象年齢は3歳から15歳で、モータースポーツ都市「鈴鹿市」ならではの「親子でスポーツとして取り組める」環境が整っています。私が大好きな鈴鹿のイベントの1つです。

 

Gモト:以前にもお聞きしましたがあらためて、クラブベルズをスタートさせたキッカケは?

小島庸平:鈴鹿ツインサーキット齋藤さんと話をしていて、施設はあるから現在のクラブベルズのようなクラブがあったら良いよね、という話をしていました。私は、三重県桑名市多度町にあった「モトクロスランド多度」で育ち、モトクロスランド多度で開催されていたダートスポーツ杯を始め、多度で育ってきたイメージが強かったです。今でも当時の友人達と交流が続いています。そう考えると、今、多度のような場所が無いなって。その時「ピン!」っと来たんです、俺もこういう場所を作りたいって。そこで鈴鹿ツインサーキット齋藤さん、モトガレージイトウさん、そして賛同してくれる仲間もいて様々な点と点が繋がってスタートしました。

Gモト:スタートした当初と比べ、今感じている変化は?

小島庸平:変化というか、皆さん、こういう環境があれば参加していただけるし、最近は周知していただけるようになりました。クラブベルズがあるからモトクロスを始める方もいらっしゃるので、必要とされるクラブベルズになってきたのかなとは思います。

Gモト:手応えは?

小島庸平:卒業するライダーもいて、そこにまた新しいライダーが来てるれますので、このような環境は絶対必要なんだって感じています。

Gモト:続けている中で、ご自身が得られている事は?

小島庸平:子供達から見られているからこそ、さらにしっかりとやらなきゃって意識が高まりました。

 

Gモト:続けてきて良かったと感じる瞬間は?

小島庸平:やっぱり、ライディングが上手になってくれたり、カッコ良くライディングできるようになった瞬間を見ると「おっ」って感じます。

Gモト:10年後にはどのようなクラブベルズになっていて欲しいですか?

小島庸平:全国的にクラブベルズのような環境が派生していってほしいです。

Gモト:小島庸平にとってクラブベルズとは?

小島庸平:10年後の全日本モトクロスを作るための大切な存在です。

 

Gモト:現在、モトクロスを取り巻く環境が良いとは言えない現状の中で、どうして、大きな熱量を持って頑張れるのか?

小島庸平:そうですね、まず、私自身、頑張っているつもりがないかもしれません。協力してくれる人達が皆さん頑張ってくれているし、私自身が、やるべき人、やらなきゃいけない人だという自覚があるので、やっているだけ。私は周りに恵まれています。

 

モータースポーツ都市・鈴鹿市に取材で通いはじめて約2年。
そこで出会ったのは、世界を舞台に活躍する人々、そして地元に根ざしてモトクロスを支える仲間達でした。
本場アメリカでトップライダーとして活躍する下田丈選手の父・下田陽一氏。
MIEレーシングを運営し、世界中を駆け回る森脇緑さん。
地元でコースを運営し、普及活動に尽力する鈴鹿ツインサーキットの齋藤ご夫婦。

小島監督の意思を共有し支える仲間達。
そしてライダーとご家族。
小島監督を切り口に取材を重ねるなかで、私が見てきたのは「リアルスタンダードと情熱」。
それは、純粋に、真剣にモトクロスに取り組む皆さんの姿でした。
関東のモトクロスしか知らなかった私にとって「鈴鹿のモトクロス」は衝撃的。
関東で失われつつあると感じていたリアルスタンダードと情熱が、鈴鹿には今も息づいています。

昨今、低迷が見られる日本のモトクロス。
その現状の中で、「モトクロスの原点」から「世界での活躍」までが1つの街に存在しているのは、奇跡に近い事かもしれません。
皆さん、今後も小島監督を中心に広がる鈴鹿のモトクロスから目が離せませんよ!!
本気でモトクロスを楽しむなら、ぜひベルズレーシングに触れてください。
鈴鹿には「モトクロスの原点」と「世界への挑戦」が共存しています。

 

小島監督、9月20日、21日に奈良県名阪スポーツランドにて開催される、D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ2025第5戦近畿大会にプレイングマネージャーとして参戦されます。第5戦のIA1クラスは関東大会と同じく「15分プラス1周」の3ヒート。

最近、小島監督のSNSを拝見していると、練習、トレーニングをガッツリやられている様子。9月7日、全日本モトクロスが開催される名阪スポーツランドで開催された地方選手権でも好走を魅せていました。こうなると、スタートでたら!?と期待してしまうのは私だけではないですよね!

ぜひ、会場でリアルタイムでベルズレーシングの全日本モトクロスの応援をよろしくお願いします。

ビハインド・ザ・ゲート – The Newsmoto

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