「たまMOTO」特別編|竹中純矢選手スペシャルインタビュー(vol. 1)

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昨年の暮れ、2017シーズンの体制について様々な噂が飛び交っていた時期、えかきやの元に「竹中純矢選手引退?」という未確認情報が飛び込んできました。SUZUKIファクトリーに所属しIA2クラスで活躍したトップライダー中のトップライダーがまさか…という思いと同時に、2017年 SUZUKIはIA1だけらしい…という噂も耳にしていたので「万が一ということはあるのかも」とも考えました。

 

噂を耳にした直後、たまたま竹中選手にお会いする機会に恵まれたので単刀直入に質問してみたところ「ホントに引退しますよ」との答え。そして逆に竹中選手から「お世話になった方々には徐々にですが直接お知らせしているんです。でも、僕SNSとかをあまりやっていないのでファンの皆さんにお伝えする術がなくて…できたら「The Newsmoto」を通じてお知らせできないでしょうか?」という相談を受けました。

 

年が明けて1月、新しい進路が決まったというお知らせが届き、いよいよインタビューをさせていただくことに。引退を決意するまでの経緯やレース活動中の想い出話などを伺いました。

 

 

昨年末のダンロップパーティー直前、丸の内のビル内で撮影。「こんな風に写真を撮られるのも最後ですねえ」とぽつり。「トレーニング止めてから太っちゃってズボンのウエストがヤバいです」と苦笑いしつつのスーツ姿。

 

 

  • 引退までの経緯

【勝てなきゃやる意味がないんです】

 

たま:さて、どこからお話をうかがいましょうか?

竹中:引退の報告…ですかね

たま:ファンの方にむけて…ですね

竹中:そうですね。関係者には電話等でお知らせしてあるので、ファンのみなさんに…ですね。

たま:では引退を決められた経緯を。

竹中:SUZUKIファクトリーでのIA2クラス参戦がなくなって… 2017年シーズンを走るのに「勝てる環境」が整わなかった、というのが理由のひとつですね。それと同時に大学の卒業が決まっていたから先々の事を考えて「就職」という道を選びました。

たま:自分の中で具体的に、レースを続けずに就職しようと考えたのはいつだったんでしょう?

竹中:昨年12月の頭ですね。

たま:それはSUZUKIのファクトリーで走る道がなくなりますよっていうお話があった時?

竹中:そうですね、完全に(SUZUKIでの)契約がないっていうのが決まって、他のメーカーで走るのも無理っていう事も決まって、悩みに悩んで悩んで悩んで…決心した結果ですね。

たま:これは以前に伺ったんですけど竹中選手のレースへのモチベーションはまず「勝てる事」が一番で…

竹中:そうです。勝てなきゃやる意味ないですね。

たま:で、勝てない状態で続けるよりは将来の事も考えたらきちんと就職をしたほうがいいだろうと思ったと。

竹中:そうです。

たま:「働きながらスポット参戦する」っていう人もいるじゃないですか?そういうのは竹中選手の言う「勝てないと意味が無い」というスタイルに合わないと?

竹中:はい。それで勝てると思っていたら甘いですよね。

たま:勝てないんだったら「モトクロッサーに乗ってレースに出る」ということ自体が竹中選手にとっては意味がないんですね?

竹中:そうですね。

たま:そもそものモチベーションが「勝つ」ことだから、そのモチベーションが保てない状況ならきっぱり「レースはやらない!」と。

竹中:そうですね。もう、モトクロッサーに乗ることもないですね。嫌いではないですけど乗らないでしょうね。現に、引退すると決めてから一切バイクに触ってないですし、今のところ練習したいともまだ思ってないんで。今は、まるっきり全然違う第二の人生のことしか考えてないですね。

たま:なるほど。

 

 

2016 名阪

 

  • 全日本IA クラスを走って…

【一番イケてたのはKawasaki最後の年】

 

たま: A級に上がって何年でしたっけ?

竹中:Kawasaki 3年、SUZUKI 3年の計6年ですね。まあ、6年やってチャンピオンとれなかったら厳しいですよね(苦笑)

たま:その6年の中で自分で一番乗れてたイケてたっていうのはいつ?

竹中:ぐいぐい行ってたのはKawasaki最後の年ですよね。あの時が一番勢いありましたね。SUZUKIに来てからも勢いが無かったわけではないですけど… なんていうんだろう、Kawasaki最後の年は自分の中のモチベーションみたいなものがむちゃくちゃ上を向いていましたね。SUZUKIに入ってワークスっていうプレッシャーに負けたのかなぁ…わかんないですけどね。

たま:環境が整うと責任が大きくなりますからね

竹中:やっぱり「会社」であることがぜんぜん違いますね。そもそも設営からなにもしなくていいっていうのが…もう、その時点でそわそわしちゃって。なんか動いてる方が落ち着くんだけど?みたいな。むしろ一緒にテント立てたいですくらいの(笑)ひと汗かいて練習に行く、そのくらいのほうが勢いついて楽です…みたいに思ってましたね。

たま:SUZUKIに入った時は幾つでしたっけ?

竹中:大学2年の時ですから20歳ですね

たま:そのくらいの年齢だと組織の中で自分がどう動いていいか探るかんじ?

竹中:いや、探り様がなかったですね。なんもわかんないですし。とりあえず一言も喋らないで従ってましたね。

たま:ファクトリーに慣れたなって思ったのはどれぐらい経ってからでした?

竹中:2年目ですかね。メカニックとは最初の年の夏過ぎくらいから打ち解けてはきてましたけど… 最後の最後まで上の人とはなかなかうまくコミュニケーションとれなかったですね。

たま:でも、楽しい先輩2人が一緒だったのはよかったんじゃないですか?

竹中:先輩にはめちゃめちゃ恵まれましたね。それはほんとによかったと思います。

たま:ほんとに仲良しでしたもんね、3人で。

竹中:そうですね。結局、あの偉大な熱田さんと一緒に引退っていうことになってしまいましたからね(笑)

たま:あー!たしかにね。

 

 

2016 最終戦菅生。3人並んで和気あいあいとサイン会を行う姿もこれが最後になりました。

 

  • SUZUKIの先輩二人について

【運転中に2時間説教されたこともありました】

 

たま:じゃあ、先輩との想い出話でも聞きましょうか。

竹中:庸平さんはすごい気をつかって後輩の面倒を見てくれるカンジですね。熱田さんは気になったことをとりあえず突っ込んでくれる人。見て気になったらその場で突っ込む人なんですよ。対して庸平さんは見て気になってもそれが言うタイミングか言わないタイミングかを見計らって言う。

たま:庸平さんのほうが繊細?

竹中:そうですね(笑)熱田さんはド、ストレートですね。(笑)

たま:でもそのバランスがよかったんだ?

竹中:そうですね。庸平さんが気にして言わない所を熱田さんがドカーンって言ってくれるんで、2人がかりでずっと常に指導してくれてたカンジですね。

たま:可愛がられてましたよね?

竹中:そうですね。事前テストで車を運転中に2時間近く説教された事もありますからね(嬉しそう)

たま:それは熱田さんに?

竹中:はい。練習のしかただとか、勝つ為の意識が低いとか…「もっと死ぬ気で行けよ」みたいなことを言われて「はい!はい!」って言いながら2時間運転しましたよ。ふふふ…(嬉しそう)

 

 

ひときわ肩幅が広く見えるのはお母さんの手作りインナープロテクターによるもの。このプロテクターのおかげで軽い怪我で済んだ転倒が幾度も。

 

  • 怪我に関する想い出

【弘楽園で走れたのは間違いなく母の愛(プロテクター)のおかげ】

 

たま:そういう環境で3年走れたのは良かったですね。若干ね、怪我とかあったけどね…

竹中:そうですねー、五体満足で走れたことはほとんどなかったですよね(苦笑)複雑骨折こそなかったですけど。単純骨折ばっかりやってましたね。で、無理してレース出て長引いて…っていう。

たま:それでも比較的大きな怪我はなく…

竹中:奇跡ですね。

たま:母の愛のプロテクターで…

竹中:(2016年の)弘楽園を走れたのは間違いなくあれのおかげでしたね。

たま:ヒート2の時にラムソンでぶっとんだんだよね

竹中:むちゃくちゃ怖かったです。ここ最近で一番ヤバかったですね。本気で「死んだ!」と思いましたからね。

たま:着地でバラけたんだっけ?

竹中:飛び出しからバラけてました。飛ぶ前にほぼバイクと分離したように飛んでって人間だけ着地に叩き付けられたカンジですね。今年はラムソンの高低差が低くなってたんですよね。だからまだよかったのかなっていう。でも、しばらく動けなかったですからね。

たま:それで大きい怪我に繋がらないっていうのがすごいよね

竹中:まあ肩痛めたくらいでしたからね。それでも長引いたけど…(苦笑)後で見たらお腹にもぶつけた跡があって、たぶんハンドルあたってそれで分離しちゃったんでしょうね。だから内臓も調べたんですけど問題なかったんで。

たま:そこは母の愛(プロテクター)で守られてたんですねー

竹中:ほんとですよー。プロテクターも見事に壊れてましたからね。ダサいと言われ続けながらもつけていた甲斐がありました(笑)

たま:(笑)あ、気にはしてたんだ?

竹中:まあ、実際ダサいですからね。思ってはいましたよ(笑)暑いし、重たいし、ダサいし、やだな…とは思ってましたよ。

たま:でもつけてて結果助かってますもんね。

竹中:そうです。

 

 

スタート前は眉間に皺を寄せての険しい表情が多かったですよね

 

  • 海外経験について

【海外のコースで一番たくさん走ったのはロンメルです】

 

たま:先日お話した時に「比較的満足して終わる」みたいなことをおっしゃってたじゃないですか「やりたいことはひとしきりやったから」って。

竹中:そうですね。

たま:じゃあ、思い残す事があるとしたら…

竹中:それはもうチャンピオンとれなかったことだけですよね。まあ、世界戦(MXGP)にも出れたし… できればポイント獲得… できなくてももうちょっと上位を走ってみたかったけど、スランプの時に行ってスランプを脱出できたきっかけになったと考えれば、良かったのかなと思いますし。そういう経験が出来たのはSUZUKIのおかげですよね。

たま:ネイションズも出られたし?

竹中:まあ、棚ぼたでしたけどね(笑)棚ぼたですけど、実力では行けなかったけど、あれもいい経験だったと思います。あれのおかげで何かが変わって広島でぐいぐい行けましたからね。なかなかいないんじゃないですか?ネイションズと世界戦って…。世界戦経験できる人が少ないですもんね。あ。スーパークロスには行けなかったですねー。

たま:でも、それ考えてなかったでしょ?(笑)

竹中:出る気もなかったですけどね(笑)

たま:あまりアメリカを見てなかったですよね?どちらかというとヨーロッパを見てましたよね?

竹中:そうですね。レースって言うとやっぱりヨーロッパのほうが興味ありましたね。でも、アメリカのコースも走ってみたいとは思ってましたよ。

たま:ぜんぜん行った事ないんでしたっけ?

竹中:小学生のときに一回だけ。

たま:じゃあほぼヨーロッパの人だったんですね

竹中:そうですよ。ヨーロッパはあちこち行きましたよ。ドイツ行ってフランス行ってオランダ行ってスペイン行ってスイス行って…あとどこだろ?

たま:庸平君が先に帰っちゃって預けられてホームステイしていたのは…

竹中:ベルギーですね。ベルギーが拠点だったんで海外のコースではロンメルが一番たくさん走ってますよね。

たま:ちょっと威張れますねそれは

竹中:ふふふ…

たま:そういったことはなかなかできない経験だと思うし、そういった経験はこれからの人生で何か役に立つ事があるかもしれない…

竹中:「海外に行った事ある」っていうのは就職の面接で使えましたよ

たま:あ!そうなんだ?

竹中:海外に行った事があるかないかという差は大きいみたいですよ。英語が喋れる喋れないは関係なく。体験しているということが大事みたいで。

たま:視野が変わるからかな?

竹中:…って言ってたら海外に飛ばされたりして(笑)ちょっと台湾行ってきてーみたいな?(笑)

 

 

以上、前編となる vo. 1 はここまで。インタビュー後編 vol. 2 は下記リンクより!

 

「たまMOTO」特別編|竹中純矢選手スペシャルインタビュー(vol. 2)

 


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